求職者の本質を見抜く「STAR面接(行動面接)」とは?質問例もご紹介

「STAR面接(行動面接)」とは 採用

採用面接において「求職者の本音や本質」を見極めることは、自社とのマッチング度を確かめるうえで欠かせないポイントです。「入社後、期待通りに定着してくれるかどうか」を面接で見通すためには、スキルや経歴といった表に出やすい部分だけではなく、「主体性」や「問題解決における思考プロセス」など、行動特性(コンピテンシー)を見定めることが重要になるでしょう。

面接時に行動の特性を知る有効な手段として、過去の行動に焦点を当てて質問を行う「行動面接」があります。なかでも、4つの観点をもとに質問を深めていく「STAR面接」は、Googleの採用面接において取り入れられているフレームワークとして知られ、求職者の思考や行動の傾向を知る効果的な手法として用いられています。

STAR面接の枠組みを活用することは、採用の精度を高めることにつながるでしょう。この記事では、STAR面接の概要や、導入するメリットをふまえたうえで、実際の面接で使える質問例を紹介します。

STAR面接(行動面接)とは

STAR面接(行動面接)とは

「STAR面接」は、「行動面接」と呼ばれる面接技法において導入されるフレームワークです。そこでまず、「行動面接とは何か」について把握しておきましょう。

行動面接の典型的な質問例としては、「これまでにもっとも成功を収めた体験について教えてください」「仕事の中で挫折を乗り越えた経験はありますか?」といったものが挙げられ、質問の内容そのものは珍しいものではありません。

「行動面接」という言葉で強調されているのは、こうした質問を通じて求職者の「行動特性」を知る、というポイントです。すなわち、求職者の「過去の行動」から、「動機づけ」や「課題解決のための選択」など、考え方の傾向や選択のパターンについて理解することが面接の目標となります。

この行動面接の目的を達成するうえで有効なのが、「STAR面接」のフレームワークです。「STAR」とは「Situation(状況)」「Task(課題)」「Action(行動)」「Result(結果)」の4つの単語の頭文字を取った言葉であり、この枠組みから求職者の特性を理解することが目指されます。

Situation(状況)とは

まず、「Situation(状況)」という言葉で表されているのは、「行動を起こすうえでの前提となるさまざまな条件」のことです。たとえば「前職における職場環境」や、「組織の体制」などが挙げられるでしょう。

プロジェクトが立ち上がった背景や目的などについて質問することで、「置かれた状況に対して、その人がどのように対処するのか」といった傾向を把握できるでしょう。

Task(課題)とは

STARの2番目の要素である「Task(課題)」は、組織における自身のポジションや役割など、「どのようなことを成し遂げなければならなかったか」を表しています。

「その人が自身の目標やミッションをどのように認識するか」という傾向を知ることは、当人の目的意識の持ち方や、責任に対する向き合い方、課題解決に向けたモチベーションの保ち方などについて理解を深めることにつながります。

Action(行動)とは

「Action(行動)」は、ここまでの「状況」や「課題」をふまえ、「具体的にどんな行動を取ったのか」を知るための観点です。

「どんな行動を取り、なぜその選択をしたのか」という点を深めていくことで、行動のトリガーや、課題解決のための工夫、他者に協力を求めるプロセスなど、求職者の思考様式について大きな示唆を受け取ることができるでしょう。

Result(結果)とは

最後の「Result(結果)」は、実際に行動を起こした後、「どのような成果につながったか」を知るための観点です。

客観的な数値だけではなく、結果から学んだことや、改善すべきだった点などについても質問を掘り下げることで、求職者におけるフィードバックのあり方について知る好機となるはずです。

STAR面接を取り入れるメリット

STAR面接を取り入れるメリット

STAR面接のフレームワークを用いた行動面接は、求職者の思考や行動のパターンを理解することを目的としており、採用の精度を向上させるうえで有効な観点を提示してくれます。

以下では具体的な観点から、STAR面接を導入するメリットについて解説していきます。

見極めにくい「人柄」や「価値観」に焦点が当てられる

採用面接においては、求職者の「実際の人物像」や「本音の価値観」を把握することが常に課題となります。

STAR面接は、「これまで何をなしたか」ということに加え、その行動における動機や背景を深掘りし、課題に対する対処のパターンにスポットを当てることを特徴としています。「何をなしたか」という事実面だけではなく、「なぜ」「どのように」という動機や方法について質問を進めていくことで、仕事における価値観や考え方を理解しやすくなるでしょう。

STAR面接においては、質問の内容もテンプレートなものになりにくいため、「用意された答え」ではなく「流れの中で考え出された答え」が示されると考えられます。それゆえに、おのずと求職者の本来の考えが浮かび上がりやすいといえるでしょう。

「枠組み」があることで話の軸が定めやすい

面接において知りたいポイントをコンスタントに引き出すうえで、「質問をあらかじめ用意しておく」という方法がまず思い浮かぶかもしれません。とはいえ質問を固定してしまうと、話の流れに応じて柔軟に人柄を掘り下げていくことが難しくなる場合もあるでしょう。

STAR面接は「固定の質問」ではなく「枠組み」にもとづいて質問を深めていく方法であるため、話が意図した方向とは異なる形で展開した際にも、面接の軸を見失わずに進められると考えられます。個々の求職者に対する柔軟性を保ちながらも、明確な趣旨に添って面接を展開するうえで、「STAR」のフレームワークは確かな指針となるでしょう。

STAR面接の質問例

STAR面接の質問例

STAR面接の入り口となる質問は、一般的な行動面接の内容から大きく変わるわけではありません。たとえば「これまでの仕事でもっとも達成感を得た経験」や、「もっとも苦労した経験」など、過去の特徴的な経験について聞くのがスタンダードでしょう。ここから、求職者が回答した内容について、STARのフレームワークにもとづき質問を掘り下げていきます。

STARのフレームワークは、前提状況から行動の結果まで、一連の流れの中で捉えるものです。そのため基本的には、「S」から「R」までを順序立てて面接を進めていくのがスムーズでしょう。とはいえ、「質問は必ず順番通りにしなければいけない」というわけではなく、実際の話の流れに応じて適宜欠けている観点を補っていく、という形でも問題ありません。

「状況」「課題」「行動」「結果」という枠組みは同じでも、とくに知りたいポイントによって質問の流れは異なります。以下では例として、経済産業省により「社会人基礎力」として掲げられている「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」について知るための質問を、STARの枠組みに沿って紹介していきます。

Situation(状況)に関する質問例

行動の背景や周囲の環境など、過去の経験における前提条件についての質問です。

前職の経験などを聞く際には、周囲のメンバーの年齢構成や、プロジェクトの具体的な内実など、コンプライアンスに関わりかねないケースも考えられます。そのため質問内容に応じて「差し支えない範囲で」といった留保をつけておく必要があるでしょう。

■「前に踏み出す力」に焦点を当てた質問例

・プロジェクトの開始にあたって、チーム全体ではどのような目標を掲げていましたか?

・全体の目標に対して、ご自身ではどのような目標を設定していましたか?

■「考え抜く力」に焦点を当てた質問例

・そのプロジェクトは、どのような背景から企画されたのですか?

・目標を達成するにあたり、プロジェクトの進行期限は十分なものでしたか?

■「チームで働く力」に焦点を当てた質問例

・プロジェクトにはどのようなメンバーが関わっていましたか?

・ご自身にとって、そのチームは意見を出しやすい環境にありましたか?

Task(課題)に関する質問例

行動を起こすうえでの問題点やハードル、業務におけるボトルネックなど、「その経験において乗り越えなければいけなかったポイント」について質問していきましょう。

■「前に踏み出す力」に焦点を当てた質問

・目標を達成するには、どのくらいの努力が必要だと感じられていましたか?

・プロジェクトに取り組む際のハードルは高く感じられましたか?

■「考え抜く力」に焦点を当てた質問

・ミッションや目標を実現するうえで、解決しなければならなかったポイントを教えてください

・組織の課題や問題点に照らしたときに、ご自身が成し遂げなければならなかったポイントは何ですか?

■「チームで働く力」に焦点を当てた質問

・プロジェクトにおいて、どのような役割を任されていましたか?

・目標やその達成プロセスについて、どのくらいメンバー間で共有できていましたか?

Action(行動)に関する質問例

特定の目標を達成したり、課題を解決したりするために、具体的にどのような行動を取るのか、どのような思考プロセスをたどるのか、という点についての質問です。

■「前に踏み出す力」に焦点を当てた質問

・目標達成に向けて動き出す際に、どのようなポイントから着手しましたか?

・計画を実行に移す際に、困難に感じた点はありましたか?それをどのように乗り越えましたか?

■「考え抜く力」に焦点を当てた質問

・困難や課題を乗り越えるために、どのような工夫をしましたか?

・実行段階において不測の事態が生じることはありましたか?それに対してどんな対処を取りましたか?

■「チームで働く力」に焦点を当てた質問

・プロジェクトの進行にあたり、周囲のメンバーとどのように協力していましたか?

・困難なポイントについて、周囲に相談することはありましたか?

Result(結果)に関する質問例

結果からどのようにフィードバックを受け取り、改善や成果の再現につなげていくのか、という点についての質問です。

■「前に踏み出す力」に焦点を当てた質問

・経験を通じて、どのようなことを学びましたか?

・その経験で学んだことは、これからどのような場面で発揮されると思いますか?

■「考え抜く力」に焦点を当てた質問

・当初の目標に対する達成状況はどの程度だと考えていますか?

・全体のプロセスを振り返って、改善すべきポイントなどがあれば教えてください

■「チームで働く力」に焦点を当てた質問

・チームの中で、どのような役割を果たせたと思いますか?

・その経験を通じて、チームにはどのような影響を与えられたと感じていますか?

まとめ

「入社後に業務をスムーズにこなせるか」というポイントを、面接段階で総合的に見極めるためには工夫が必要です。実際に組織の中で仕事をする際には、スキルや能力だけではなく、個々人の思考や行動のパターンが重要なファクターとなるため、この点を見定めることが人事担当には求められます。

考え方や行動様式に焦点を当てるうえで、STAR面接は有効な指針となってくれます。表面からは見えにくい人柄や性格、価値観などについて、定められた枠組みから質問することで、効果的に求職者の特性を理解することにつながるでしょう。

実際にSTAR面接の手法を取り入れる際には、質問をあらかじめ準備しておくというよりも、「求職者の話をSTARの枠組みの中で捉えていく」という意識が重要になります。「状況」「課題」「行動」「結果」という4つの観点を常に念頭に置きながら、求職者の個性や特性を引き出せるよう、掘り下げるべきポイントを見極めていきましょう。

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この記事を書いた人
鹿嶋祥馬

大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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