組織改善を図るために実施したい退職面談(退職者ヒアリング)

退職面談職場環境

従業員の定着率向上を図るうえで、「退職につながるきっかけ」を把握しておくことは大きな意味を持つでしょう。さまざまな媒体で退職理由についてのアンケート結果などが発表されていますが、自社環境の具体的な問題点を知るにはやはり「退職者に直接聞く」形が確実です。

退職面談(退職者ヒアリング)は、職場を離れることが決まった従業員から退職の理由やきっかけについて聞き出すことで、自社の職場環境における問題点を客観視し、それに対する改善策を講じるためのプロセスです。

この記事では、退職面談において多くのフィードバックを得るために意識すべきポイントや、聞いておきたい質問などについて解説したうえで、実際に退職面談を導入している企業の事例を紹介していきます。

退職面談(退職者ヒアリング)とは

退職面談とは

退職面談(退職者ヒアリング)とは、退職の手続きを終えた従業員に対し、退職理由や職場環境の問題点などについて意見を聞くことを指しています。

単純に退職の理由を聞くのでは、人間関係への配慮などのために率直な意見を引き出せないこともありますが、「退職者の意見を今後の組織改善に活かすための場」という趣旨のもとで面談の席を設けることにより、正直な意見を伝えてもらえる可能性が高まります。

退職面談は、退職者が「すでにその組織を離れることが決定している状況」において行われるため、率直な意見を得られやすい半面、経営者や人事担当者にとっては耳の痛い意見を提示される可能性もあるために、日本においてはまだ一般に定着していないのが現状です。欧米においては「退職面談」に相当する「exit interview(エグジットインタビュー)」が広く行われており、第三者視点から偏りのない形で意見を得られるよう、エグジットインタビューを外部に委託する企業も多く見られます。

自社の環境についての「忖度のない内側からの意見」を聞ける機会はそうあるものではなく、フィードバックを客観的に受け止めることは、組織の改善策を講じる際の「ショートカット」につながるかもしれません。

退職面談で意識すべきポイント

ポイント

退職面談の目的は「退職者の率直な意見を組織改善に活かすこと」ですので、退職者が遠慮や忖度をしてしまうような面談形式は避けなくてはなりません。ここでは、退職者の「本音」を引き出し、改善に向け多くの材料を得るために留意しておきたいポイントを紹介します。

退職の手続きを終えてから面談を打診する

退職手続きが済む前の段階で面談を申し入れてしまうと、退職者側は「無理に引き留められるのではないか」と身構える可能性があります。あくまでも「今後の環境改善のために意見を聞かせてほしい」という趣旨を明確に伝えるために、ヒアリングの時期は退職手続きが一段落し、退職者が落ち着いている段階で設定するのが望ましいでしょう。

また、退職を決めた従業員のなかには、「なるべく他の社員と関わりたくない」と考えている方もいるかもしれません。拒否する権利があることをあらかじめ示しておくことで、会社側の誠意も伝わり、お互いに柔和な態度で面談に臨める可能性が高まると考えられます。

肯定的・受容的な態度を徹底する

せっかくエグジットインタビューを行っても、退職者が上司などに遠慮し、本音を聞き出せなければ意味がありません。面談にあたっては、まずは退職者のこれまでの貢献に対して感謝を述べてから、発される意見に肯定的な態度を貫いていく必要があります。たとえ一方的な不満だと感じても、反論や否定はしないように心がけましょう。感情的な主張であっても、それを客観的な視点から見つめてみることで、フィードバックできるポイントを掬い上げることができるかもしれません。

話の流れに応じて共感や同調の構えを見せながら、さらに深い部分まで退職者の思いを掘り下げていくことで、改善につながる材料を多く得られるでしょう。

面談担当者・時間・場所への配慮

面談を行う際には、退職者にプライベートの時間を割かせないことはもちろんですが、周囲の環境に配慮して場所を設定することも重要です。情報が漏れるリスクを予防し、退職者が不安なく話せる場を用意しましょう。

なるべく本音を引き出せるよう、面談の担当者を決める際には役職に固執せず、「退職者がしがらみなく話せること」を重視するのが望ましいです。関係の近い人物でもよいですが、人間関係が理由となって退職に至っているケースもありますので、通常の業務において関わりの少ない人事担当や、場合によっては社外の機関に委託することを検討してもよいでしょう。

退職面談で聞いておきたい質問

質問

退職面談を今後の組織改善へとフィードバックしていくために、エグジットインタビューにおいて必ず押さえておきたい質問内容を例示します。退職者によってはスムーズに答えにくい場合もありうるため、聞き方や質問の順番を変えるなど工夫しながら、プレッシャーをかけないよう進行していきたいところです。

退職を考えはじめたきっかけと、決意したポイント

退職の動機に関わる部分は、エグジットインタビューにおける核心的な質問となります。仕事に関して明確な考えを持っている従業員であれば、退職理由について問われるだけで組織の課題などについても詳しく言及してくれるかもしれません。

はっきりとした答えがすぐに得られなくとも、「いつ頃から仕事に疑問を抱きはじめたか」「その頃にどんなことがあったか」「気持ちがどう変わっていったか」など順を追って聞いていくことで、従業員と組織との不一致がどこで生じたのかを突き止められる可能性があります。

退職理由として育児や介護など、プライベートの都合に関わる内容が挙げられた場合には、「どのような制度があれば仕事との両立が可能だったか」といった点をヒアリングするとよいでしょう。

改善してほしかったポイントや、組織の課題

組織の改善点や課題は、退職者ヒアリングを行う「目的」となる部分ですので、これに関する質問は是非とも聞いておきたいところです。

退職者と良好な関係を築けているケースでは、改善に向けた具体的な提案を得られる可能性もあるでしょう。提案とまではいかなくとも、「仕事をしていて困ったこと」について詳しく聞いていくことで、組織の課題を浮き彫りにするヒントが得られるはずです。主観的な意見や感情に傾いた内容の主張であっても、後から「なぜそうした不満が生まれたか」ということを第三者視点から捉えることで、組織の体制や構造面の問題に関わる示唆が得られるでしょう。

組織の気に入っていた点

マイナス面から学ぶことはもちろん大切ですが、自社の職場環境の特性を総合的に理解するうえで、ポジティブな要素を聞き出しておくことも重要です。とりわけ退職者目線から見た職場の強みは、忖度なしの美点であることも多く、今後のビジョンに軸を据える際の参考になると考えられます。

組織の体制面に関わる内容を聞いてもいいですし、「お世話になったと思う人」など「個人」に関する感想を挙げてもらうことも有効です。

仕事に意義ややりがいを持てる場面はあったか

退職者が挙げた主な退職理由のほかに、一般的なアンケートなどで挙げられやすい項目についても確認しておくとよいでしょう。エン・ジャパン株式会社が2018年に発表した「退職のきっかけ」をめぐるアンケート結果においては、「やりがい・達成感を感じない」という回答が2番目に多く、全体の36%が退職の契機として挙げています。(参照:エン・ジャパン(en Japan)「8,600名に聞いた「退職のきっかけ」調査。転職理由は「給与」「やりがいのなさ」「企業の将来性」。―『エン転職』ユーザーアンケート調査 結果発表―」

自社の仕事で達成感を抱いた瞬間や、どのような点にやりがいを感じていたかをヒアリングしながら、反対に「やりがいを感じられなかった原因」についても把握できるような質問をしていくことで、退職者の減少につながるポイントが見えてくるかもしれません。

自分が評価されている感覚はあったか

評価制度や待遇に関する不満も、先のエン・ジャパンによる調査において上位に位置する退職理由です。「給与が低かった」という理由は39%で1位、「評価・人事制度に不満があった」は25%で6位となっています。

しかし実際に、「働きに見合った賃金が得られない」ことが退職理由の一つだったとしても、自らそれを口に出すのは憚られるものです。そのため退職理由とは別の質問として、評価制度や待遇について納得していたかどうかを確認する内容を盛り込み、「給料への不満」という聞き出しにくいポイントをチェックしておきましょう。

退職面談の活用例

活用例

退職者へのヒアリングを制度として導入している企業はまだ国内には少ないものの、退職面談を有効に活用できている企業は定着率において明確な成果を得られている傾向にあります。

紳士服などを扱う「株式会社はるやまホールディングス」は、離職率改善のため2013年より退職者ヒアリングを実施し、退職理由の正確な把握にもとづく制度改善を実施してきました。結果として2017年度の離職率は8.8%(同年の卸売業・小売業平均は14.5%)となり、低い水準に抑えることに成功しています。

ここでは、はるやまホールディングスが行っているヒアリングの方法や、面談からのフィードバックをもとに実施した改善策について紹介します。(参照:J-CAST ニュース「「退職者ヒアリング」で離職率低下 はるやまHDの”働き方改革”が奏功」

はるやまホールディングスのヒアリング方法

はるやまホールディングスのエグジットインタビューにおいて特徴的なのは、「役員も面談を担当することがある」という点です。

フォーマットとして退職面談専用の記入シートが用意されており、まずは退職者に対して直属の上司がヒアリングを行ってシートを埋めていきます。そのシートは事業部長などに提出されますが、そこで十分に本音を引き出せていないと判断されれば、さらに上のマネージャーや役員が直接ヒアリングを行います。

一人の従業員の正確な理由を引き出すために、会社の重役を動員するというのはかなり大がかりなシステムに思えますが、それだけ「包み隠すことのない退職理由」は組織改善にとって大きな意味を持つといえるでしょう。

フィードバックを活用した施策

退職理由についてのヒアリングを通じ、多く聞かれたのがまず「他の職種への転職希望」であったため、他部署への異動を希望できる制度が導入されました。さらに給与水準への不満に対応するため、現場のスペシャリストが管理職と同等額を得られるシステムを整えたり、転勤希望を反映できる体制を整えたりといった施策が実践されているとのことです。

はるやまホールディングスの取り組みは、ヒアリングで聞かれた声を実際の組織改善に活かしている好事例として、「リクナビNEXT」が企業による働き方への優秀な取り組みを表彰する「GOOD ACTIONアワード」を2018年度に受賞しています。

まとめ

「組織の課題や問題点」に関する従業員の意見は、組織を改善するうえで最も参考にできる材料の一つですが、普段は関係性への配慮などのため率直な意見を引き出すことは難しいものです。

退職の決定している従業員から正直な意見を聞く退職面談は、「多くの従業員が思っていても指摘できない問題」や「これまで目の届かなかった領域の課題」などを把握するきっかけとなりうるものであり、適切な環境を整えることで企業にとって非常に有意義なものとなるでしょう。

今後に活かせる意見を引き出すうえで、重要なのは退職者に対する敬意にもとづく配慮です。「自社を去ることが決まっている人材から学ぶ」という観点が一般的に定着していない現状において、退職者の意見からヒントを得ようという真摯な姿勢は後々のアドバンテージにつながっていくでしょう。

この記事を書いた人
鹿嶋祥馬

大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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