外国人を雇用する際の注意点は?社員・アルバイト採用を成功に導くポイント

国際的 採用

「外国人の雇用」という選択肢は、現在の日本社会における「労働人口の減少」という課題に対し、有力な解決策となりうるものです。深刻な人手不足に悩む企業のなかには、外国人雇用の開始・増加を検討しているところも多いのではないのでしょうか。

とはいえ実際に雇用するとなると、ビザなどの法制上の問題や、コミュニケーションの不安など、考慮すべき点の多さから二の足を踏んでしまうこともあるでしょう。

この記事では、外国人を雇用する際の注意点や課題について整理しながら、そうした問題をクリアしていくためのポイントを解説していきます。

外国人雇用の必要性

人材確保

労働人口の減少は政府にとっても重要度の高い課題であり、この解決に向け国外から労働力を確保しようとする動きが強まっています。

2019年には新たな在留資格として「特定技能」が認められるようになり、政府はこれ以降の5年間で最大約345,000人の外国人労働者を受け入れる方針を示しています。

>参照:日本経済新聞(2019年3月31日)

とはいえ現状、このような政府の方針について、必ずしもすべての企業が積極的な姿勢を示しているわけではありません。2019年にパーソル総合研究所が行った「外国人雇用に関する企業の意識・実態調査」では、外国人雇用に対して積極的な企業・消極的な企業の二極化傾向が指摘されています。
すでに外国人を雇用している企業に関しては、今後も雇用を拡大しようとする意向が見られる一方、未雇用の企業においては「外国人雇用」という選択肢そのものが検討されていない傾向が見られるのです。

こうした傾向の原因として、「外国人を雇用する際のハードルに対し、そのメリットが見えにくい」ということが考えられます。外国人を雇用している企業がさらなる雇用拡大の意向を見せていることから、「実際に雇ってみれば、そのメリットが実感できる」ことが推測されますが、未雇用の企業にとってはまず複雑な事前準備の手間などが目についてしまうと言えるでしょう。 しかし、今後の労働市場の変化を考えると、それだけの理由で外国人の雇用を敬遠してしまうのは得策ではないかもしれません。

早めに外国人雇用を検討するのが得策か

今後の労働人口の推移について、パーソル総合研究所と中央大学の発表によると、15~64歳の「生産年齢人口」は2017年時点の7,596万人から、2030年には6,656万人に減少するとされています。これにより、求人数に対する労働人口の不足数は「644万人」に上ると予測されており、とくにサービス業や医療・福祉、小売業や製造業における人手不足が深刻化することが見込まれています。

>参照:パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計 2030」

このような背景からも、企業の人材確保をめぐる競争は年々過酷になっていくと考えられ、外国人を継続的に雇用できる環境整備は重要度の高い課題であると言えるでしょう。

外国人を雇用する際の注意点

チェックリスト

上述のように、外国人を雇用したことがない企業にとっては、雇用に際しての注意点の多さが一つの参入障壁となっていると考えられます。具体的には「コミュニケーションの問題」と「手続きの煩雑さ」などが、企業が困難を覚える要素として挙げられるでしょう。 以下の項目では、外国人雇用を検討するにあたって、さまざまな課題を明確にできるよう注意点を整理していきます。

コミュニケーションや日本語力についての課題

外国人を雇用する際に、最大の懸念点となるのはコミュニケーションの問題でしょう。先のパーソル総合研究所による調査(「外国人雇用に関する企業の意識・実態調査」)でも、外国人を雇用している企業の多くが「言語・コミュニケーション」に課題を感じており、その他の「採用のノウハウがない」といった項目を抑えて一番高い39.6%が選んでいます。
一方、雇用されている外国人が不満に感じている点においても、「日本語の難しさ」や「暗黙の了解が理解できない」などコミュニケーションに関係する項目が上位を占めており、双方が言語やコミュニケーションの問題を最重要課題と考えられていることがわかります。

ここで注目したいのが、「暗黙の了解」という日本的なコミュニケーションのあり方です。言語が習得できても、国籍や文化の違いを念頭に置かなくては、円滑な意思疎通は難しくなると言えるでしょう。

在留資格など法制面の問題

外国人の雇用にあたっては、ビザをはじめとする法制面の問題もクリアしておかなくてはいけません。
まずは27種類ある日本国内の在留資格のうち、雇用したい人材が就労に関わるものを取得しているか入念に確認しておく必要があります。

就労可能な在留資格があっても、その資格の種類と仕事内容が異なっていれば不法就労となる可能性があります。出入国在留管理庁の在留資格一覧表なども参考にしながら、資格と業務内容に齟齬がないよう注意しましょう。

アルバイト雇用でも就労の可否に注意

アルバイトとして雇用する場合であっても、就労が可能な資格を持っているか確認することは必須です。留学生や家族滞在の在留資格を持っている方なら、「資格外活動許可」を個別に取得すればアルバイトが可能となりますので(風俗営業を除く)、この許可の有無を確認しましょう。
また、「特定活動」という在留資格を持っている方については、パスポートに添付されている「指定書」において、就労に関連する内容が記載されているかどうかを確認する必要があります。

その他、「短期滞在」「特定技能」「技能実習」といった在留資格では、アルバイト勤務は認められていないため注意が必要です。

不法就労の罰則は?

万が一不法就労が発覚した場合には、就労していた本人だけでなく、雇用していた企業にも「不法就労助長罪」として罰則(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)が課されます。
「そもそも在留資格があるか」「就労が可能な在留資格か」「在留資格の内容と業務の内容は合致しているか」という三点を必ず確認しておきましょう。

注意点をクリアにするための対策

課題と対策

外国人雇用を成功に導くためには、上に挙げたような課題に対し、十分に措置を講ずることが必要となります。対策における具体的なポイントについて、「コミュニケーション面」と「手続き面」の二つの角度から解説していきます。

コミュニケーション面での対策

(1)採用時に日本語能力について確認する

「働きはじめから、日本語でやり取りができなくては困る」という場合には、採用段階で対象者の日本語能力をチェックしておく必要があります。
採用時に実際に会話する機会が持てれば、どの程度まで意思疎通が可能であるかは確認できますが、そうした機会が持てない場合、採用条件として「日本語能力試験」の認定レベルを設定する、といった対応も検討するとよいでしょう。 日本語能力試験は、日本国外でも各地の支部にて受験が可能であり、日常会話レベルからビジネスレベルまで五つのレベルで結果が示されます。実際のコミュニケーション能力を完全に保証するものではありませんが、試験を受けるということ自体が、日本での生活に対する意欲の高さを示しているとも言えるでしょう。

(2)採用後の研修システムを充実させる

外国人労働者の継続的な採用を検討するのであれば、採用後に日本語習得をサポートする制度を用意することも考えておく必要があります。
外部の日本語教室による企業向け研修を利用したり、NGOなどに日本語講師の派遣を依頼したりと、予算や規模などを考慮しながら利用できるサービスを検討していきましょう。
地方公共団体の提供する日本語教室も、有効な手段の一つです。現在文化庁に主導される形で、教室の拡大・質の向上といった環境整備が急ピッチで進められている状況であり、今後外国人の日本語教育における選択肢は増えていくことが見込まれます。

>参照:文化庁「『生活者としての外国人』のための日本語教育事業 地域日本語教育実践プログラム」

(3)行政のサポートも検討

厚生労働省は、外国人雇用を検討している企業や、外国人の従業員との間にコミュニケーション上の課題を抱える企業に対し、「外国人雇用管理アドバイザー」という制度を用意しています。 「労働条件についてどう話し合えばいいかわからない」「業務の指示がうまく伝わらない」など、外国人の雇用をめぐって生じうるさまざまな問題に対し、無料で相談を受け付けています。最寄りのハローワークから申請ができますので、具体的な対策を講じる際の参考として利用するのもよいでしょう。

(4)積極的なコミュニケーションを心掛ける

馴染みのない文化や慣習に適応する際の不安は、人間が経験する不安のなかでも相当に大きなものだと言えます。お互いに「何が当たり前で、何がイレギュラーか」ということを共有していくために、業務の内外を問わず積極的に話しかけ、意見や気持ちを伝えてもらうようにしましょう。
業務について指導する際にも、「雇っているのだから、こっちに合わせるのが当然」という考えで臨むのではなく、「第三者から見て公正だと見なされるような説明」を心掛けることで、価値観や常識の溝を埋めていくことが大切です。

手続き面での対策

(1)在留資格の確認方法

対象者の就労可否を確認するためには、「在留資格の種類」や「資格外活動許可の有無」などを把握する必要がありますが、これらは在留カードによって確認が可能です。
表の面で「在留資格」「就労制限の有無」「有効期限」の項目を確認し、自社での雇用が可能かどうかをチェックしましょう。
資格の範囲を超えて就労する場合には、カード裏面の「資格外活動許可」の欄を確認するほか、「資格外活動許可書」の内容を把握しておく必要があります。

在留カードが有効か確認するには、出入国在留管理庁のホームページ内「在留カード等番号失効情報照会」にて、カード番号と有効期間を入力することで照会が可能です。

人材派遣会社を経由した雇用であっても、在留資格をめぐる情報に誤りがあるケースも存在します。「大丈夫だろう」と気を緩めず、必ず自社の責任のもと、採用予定者の在留資格についてチェックしておきましょう

(2)雇用契約で必要な手続き

通常の雇用契約を結ぶ場合と同様に、外国人を雇用する際にも契約書の発行が必要です。労働条件について明確に説明し、それを書面として発行することが雇用主の義務だからです。 言語を原因とする誤解を防ぐためにも、契約書は日本語と被雇用者の母国語との二種類で発行することが理想的でしょう。英文契約書の作成代行サービスなどを利用してもよいですが、その際にも自社の責任者による内容確認を欠かさないようにしておくことが大事です。

(3)必要となる届出

外国人労働者を雇用する際には、「外国人雇用状況の届出」が義務付けられています。雇用する方の氏名、在留資格、在留期間等について、所定の様式に従って記載し、ハローワークへ届け出ましょう。
この届出は、雇い入れの際だけではなく離職の際にも必要となるので注意が必要です。

雇用保険の有無によって、届出の際のフォーマットは異なります。雇用保険に加入させる場合には、「雇用保険の被保険者資格の取得届又は喪失届」を、雇用保険に加入させない場合は、「第3号様式」の届出書を提出します。いずれの場合も、提出期日は雇い入れ日の翌月10日まで(離職の場合は離職日の翌日から10日以内)となっています。

届出を怠った場合には、30万円以下の罰金が科されますので、提出漏れのないよう注意しましょう。

なお、届出書のフォーマットは厚生労働省のホームページからダウンロードが可能です。

優秀な外国人を採用するためのポイント

採用

外国人労働者を雇用するためのノウハウを十分に蓄積している企業はそう多くないでしょう。法律も文化も異なる国で生きてきた人材を、自社の「戦力」として育成していくためには、これまでとは異なる観点から採用活動を行っていく必要があります。 ここでは、それぞれの企業にとって有力な人材となりうる外国人を採用するために、どのような点に気をつけていけばよいかを解説していきます。

募集媒体は適切か

「どのようなルートから外国人求職者とマッチングするか」ということが、ニーズに合った人材を採用するための大前提となります。 以下、主要な募集媒体について、メリットやデメリットを検討していきます。

(1)人材紹介サービス

外国人専門の人材紹介・人材派遣サービスであれば、在留資格の確認や面接サポートなど、不安な点を解消できるメリットがあります。とはいえ、採用基準を細かく設定するなど「自社で採用の主導権を握りたい」という企業にとっては不向きとも言えるでしょう。また、コスト面でも割高となる傾向にあるため、「まずは安心して外国人を雇いはじめたい」という場合に適していると考えられます。

(2)求人サイト

広い範囲に募集をかけるのであれば、「Indeed(インディード)」など海外展開している求人サービスを活用することで、日本で働きたいと考えている外国人にアピールすることができます。Indeedは求人掲載費や採用時の成果報酬などが不要となっており、無料で広い範囲の求職者に告知することが可能です。

また、「LinkedIn(リンクトイン)」などのビジネス特化型SNSを活用することで、ハイエンド人材と直接やり取りすることが可能となります。外国語によるリクルーティングに支障がないのであれば、SNSを通じた採用は有力な選択肢だと言えるでしょう。

(3)リファラル採用

現状の従業員からの紹介や、学校からの紹介など、現在あるコネクションを辿って人材を発掘する手法です。顔が見える関係をつたって人材を探していくことになりますので、双方認識の齟齬もあまり生じないまま採用を進められ、より自社のニーズに合致した人材とつながりうる方法だと言えるでしょう。

応募者のニーズに応えているか

高度な専門技術を持った人材を採用したいケースなど、企業からの需要の高い能力を持った人材の確保を目指すのであれば、待遇面や環境面を十分に整えておく必要があります。
日本の給与水準は欧米の先進国に比べると低い傾向にあり、給与面におけるアドバンテージを提示するには想定以上の人件費が必要となるかもしれません。世界水準で通用するような人材の採用を狙うなら、給与以外にも総合的な観点から「求職者が仕事に何を求めているのか」を把握することが重要です。

外国人が「日本で働きたい」と考える理由はさまざまであり、その分応募者が「企業に求めるもの」も多岐にわたります。とはいえ多くの外国人にとって、「言語や文化の違いをどれだけ理解してくれるか」というポイントは大きな要素となるでしょう。多言語への対応や休暇制度の整備など、グローバルな観点から自社環境を整備し、異なる文化に柔軟に対応できる体制を構築していくことが求められます。

「ダイバーシティ」と「アカウンタビリティ」への配慮

優秀な外国人労働者を雇用するためには、組織のグローバル化が必須となりますが、その際重要な観点が「ダイバーシティ(多様性)」と「アカウンタビリティ(説明責任)」です。

外国人労働者のなかには、日本的な慣習や価値観からは「逸脱」と見なされるような創造性を持った人材もいるでしょう。そのような人材に対し、活躍の道を示すためには、従来の常識に囚われない柔軟性が要求されます。ダイバーシティとはそのような「自分とは異なるもの」に対する受容性であり、多国籍の人材が流入してくる今後の労働市場において前提となる姿勢だと考えられます。

また、組織のグローバル化にあたり、ルールや方針、業務内容について「誰に対しても通用する共有の方法」を打ち出していく必要があります。「この人がこう言うってことは、たぶんこういう意味なのだろう」など、閉ざされた関係のなかでのみ成立する「暗黙の了解」ではなく、客観的に見て理解・納得しうるような意思疎通のあり方を模索することが、外国人雇用において要求されるでしょう。
具体的には、雇用契約の内容や業務の範囲、評価制度などについて、クリアかつオープンに説明を行うことです。このようなアカウンタビリティへの配慮は、責任の所在の曖昧さをしばしば指摘される日本の組織にとって、ことさら重要性を持つ要素だと言えます。

優秀な労働者ほど、労働環境における「公正さ」「クリーンさ」に対する要求は高くなる傾向にあります。上記のようなダイバーシティやアカウンタビリティといった観点から、自社内で通用している独自のルールや慣習を見直し、透明性の高い組織を構築していくことが、社会の変化に対応していくためのポイントだと考えられます。

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この記事を書いた人
鹿嶋祥馬

大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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