LGBTQ+にSOGI…ダイバーシティ進む時代に今さら聞けない基礎知識

レインボーフラッグ 職場環境

未だに申請書など書類の冒頭に、男女どちらかにチェックを入れる項目を見かけます。

かつての遺物である男女二元論が現在も息づいているのは嘆かわしいものの、一方でセクシュアルマイノリティー(そもそも「少数派」と括ることで不要なカテゴライズをしている側面を感じなくもないですが、この記事では便宜上この言葉を使います)に理解を示す人や企業が増えてきているのも事実。

「ダイバーシティ(多様な人材を活かし新たな価値を生み出すこと)」「インクルージョン(全員が互いの考え方や能力、経験を認め合い一体感を目指すこと)」という2つのキーワードが、求人を行う上でも組織を構築する上でも必須条件だと考えられ始めている今、誤った発言や態度をとってしまわないようにするには、ひとりひとりがセクシュアルマイノリティー、LGBTQ+への理解を高めることが最も重要です。

残念ながら今なお同性愛を「趣味」と認識し、いずれ「正常」な異性愛者に「戻る」と勘違いしている人も存在します。正常か正常じゃないかという観点でいえば、今この世界に生きるだれもが正常です。

異性愛者やシスジェンダーだけでなく、同性愛者、両性愛者、全性愛者、無性愛者やトランスジェンダーも同様に正常であり、それぞれがまた違う性的指向、性自認に変化したとしても、それもまた正常なことなのです。

今挙げた性的指向、性自認についてくわしくは次の項で説明します。

「LGBTQ+」と「SOGI」

愛し合う女性たち

「LGBTQ+」とは、レズビアン(Lesbian)・ゲイ(Gay)・バイセクシュアル(Bisexual)・トランスジェンダー(Transgender)・クエスチョニング(Questioning)/クィア(Queer)それぞれの頭文字を指し、この中に含まれない性的指向、性自認を「+」で表した言葉です。

レズビアンは女性の同性愛者、ゲイは男性の同性愛者、バイセクシュアルは両性愛者、トランスジェンダーは生まれたときに割り当てられた「指定性別」(体の性別)に違和感をもっている、もしくはそれと性自認が異なる者、クエスチョニングは自身の性自認、性的指向についてわからないと感じていたり、違和感をもっていたり、まだ決まっていないと思っていたりする者のことを指します。

そして「クィア」はかつてセクシュアルマイノリティーに対して侮蔑する意味合いで使われていた言葉だったのですが、20世紀終盤以降にその当事者があえて自身を指す言葉として使い始めたことで、すべてのマイノリティーを意味し、また、彼らに一体感を与えて繋ぎとめる役割を担う言葉として生まれ変わりました。ただ、定義が曖昧で、恋愛対象が異性でも同性でもない者のことを指す場合もあります。

このほかにも前項で触れたように、性的指向が男女だけでなく全性別に向いている全性愛者(パンセクシュアル)や他者に恋愛感情や性的欲求を抱かない無性愛者(アセクシュアル)など、さまざまな性別が存在し、それはまるでグラデーションするように定義できない性別や定義されることを好まない者がいることも覚えておきたいところです。

なお、同じく前項で挙げたシスジェンダーとは、指定性別に違和感がなく、性自認と同じ者のことを指します。

現在では、すべての性的指向、性自認を肯定するため「SOGI(ソジ、ソギ)」という言葉を使うことが増えてきました。SOGIとは、Sexual Orientation and Gender Identityの略で、つまり「性的指向と性自認」を意味します。

「LGBTQ+」という言葉では性的指向や性自認をそれぞれはっきりとカテゴライズすることになるため、どうしてもそこにあてはまらない者が現れてしまいます。ですが、SOGIという概念はすべての人間の中に存在するため、自分の性的指向や性自認について考えたときに、他者、あるいは自分による区別や差別が生まれにくくなるのです。

すべての人が「自分の性的指向は女性で、性自認は不明だ」「自分の性的指向は男性で、性自認は男性だ」など、自分で考えて納得して決められるようになれば、それこそが「正常」な世界であるといえるのではないでしょうか。

セクシュアルマイノリティーの就職・転職

ゲイカップルの結婚

企業側がセクシュアルマイノリティーの方々含め全員が働きやすい環境を作ろうとしたとき、まずマイノリティーの方々がどのように就職、転職しているのかを知ることが重要です。

求職者であれば就職活動、転職活動の際に企業調査を行うのは基本かもしれませんが、セクシュアルマイノリティーの方の場合は、その会社が多様な性に理解があるかどうかという点もしっかりと見ていることでしょう。

そして、面接の際にカミングアウトするかどうかという葛藤があることも少なからず想定できます。カミングアウトすることで入社を拒否されるかもしれないという不安があるからです。

セクシュアルマイノリティーへの理解が低い会社に入社する場合は、カミングアウトすることを決意しても、入社後、SOGIハラ(性的指向や性自認に対するハラスメント)を受けてしまうのではないかという懸念もあります。

また、カミングアウトした後も、企業側に知識がなければ、誤った性的指向、性自認で認識されてしまい、それがまたストレスになることも考えられます。

よく聞くのが、レズビアンやゲイといった同性愛者の方はトランスジェンダーであるという認識で、会社としては気をつかったつもりで性自認が女性のレズビアンの方に男性トイレを案内したり、逆に性自認が男性のゲイの方に女性トイレを案内するといったケースです。

これは「指定性別が女性で女性を好き=性自認は男性である」「指定性別が男性で男性を好き=性自認は女性である」という、つまり女性は男性を、男性は女性を好きになるものだという誤った固定観念が生み出した妄想である可能性が高いので、頭を柔軟にすることが大事です。

それから、もともと個人情報はしっかりと守らなければいけないですが、たとえば戸籍を変更していないトランスジェンダーなどのそれについては、本人の意思なく周りに知られてしまうようなことが起こらないよう徹底する必要もあります。

カミングアウトすることでこういった心配点や課題が生まれるのであれば、カミングアウトせずに就職、転職すればいいと考える方もいるかもしれません。もちろんそれを当人が望んでいるのであれば、たしかにカミングアウトする必要はありません。

ですが、たとえば入社後、同僚や上司、取引先の方と仲良くなって恋愛などのプライベートな話に発展することもあるでしょう。そのときに異性愛者であることやシスジェンダーであることを前提に会話が進んでしまったとして、全員がひとり残らず少しの違和感もなく楽しくコミュニケーションをとれるでしょうか?

もちろん、そもそも社内で恋愛話に発展すること自体がセクハラだという意見もあるはずなので、これはあくまでも一例であり、また、繰り返しになりますがセクシュアルマイノリティーの方自身がカミングアウトを望んでいなければする必要は一切ありません。

つまり、今ここで目を向けるべき点は、セクシュアルマイノリティーの方が就職や転職の際にカミングアウトをするべきかしないべきかということではなく、異性愛者やシスジェンダーの方は通常カミングアウトをしないということです。

本来はだれもがわざわざ自分の性的指向や性自認について明かさなくても、それぞれが受け入れられる社会であるべきです。いずれそうなることを期待しながら、現状できることを改めて考えていきましょう。

すべての人が安心できる環境づくり

レインボープライド

2017年1月1日以降、男女雇用機会均等法改正により、職場におけるLGBTQ+への差別もセクハラと見なされることになりました。(男女雇用機会均等法2条1項「被害を受けた者の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、本指針の対象となるものである」)

また、2016年には、NPO法人などが組織する任意団体「work with Pride」によって「PRIDE指標」が策定され、企業のLGBTQ+への取り組みを客観的に評価されるようになりました。

これからセクシュアルマイノリティーの方を受け入れる予定のある企業や組織はもちろん、カミングアウトせずに、あるいはできずにいる方が多い現状を踏まえ、できればすべての企業が取り入れるべき環境づくりについて考えていきましょう。

対価型セクハラと環境型セクハラ

職場におけるセクハラにはさまざまな種類が存在しますが、主に2つに分けられています。「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」です。

対価型セクハラとは、労働者の意に反する性的言動や行動を行い、それを拒否、抵抗されたときに、その労働者を解雇、降格させたり、賃金を減給したり、不利益を与えるハラスメントのこと。

環境型セクハラとは、労働者の意に反する性的言動や行動を行い、それによって労働者が不快な思いをし、その就業環境で能力を発揮できなくなったり、就業意欲が低下したりするハラスメントのこと。

具体的には、実際にボディタッチをすることや性的な発言をすることも避けるべきことであり、「ホモ」「レズ」「オカマ」などといった差別的と捉えられる言葉を使ったり、「男のくせに」「女なのに」といったSOGIを否定するようなことを言ったりするのも当然ながらハラスメントに該当します。

カミングアウトとアウティング

アウティングとは、本人の了承を得ずに第三者にカミングアウトをすることです。前述しましたが、ポイントとなるのは、カミングアウトは本人の意思で行うものだということ。

たとえば、セクシュアルマイノリティーの方が就職、転職の面接の際にそのことをカミングアウトしたとします。そして採用にいたったとき、その方は「面接官に伝えただけ」であって、企業に伝えたわけではありません。そのため、ほかの社員の方に本人の意思なくお伝えするのは誤りです。もちろん不採用の場合も同様です。

また、カミングアウトしていないセクシュアルマイノリティーの方に対してカミングアウトを迫るのもいけません。もし「秘密をなくしてより親密になりたい」という理由でカミングアウトを望んでいたとしても、あくまでもそれは本人の意思によって行われるもの。だれに伝えるか、あるいは伝えないか、本人の自由なのです。

特に、自分が勤めている会社の上司や同僚にカミングアウトしたくても躊躇している場合、相手や会社のセクシュアルマイノリティーに対する知識や理解の欠如を感じているというのが原因となっていることが考えられるので、告白を迫るのではなく、とにかく相手をよく知ろうと心掛けてください。

アライと福利厚生

アライ

自社がいかにLGBTQ+、セクシュアルマイノリティーに理解があるのかをアピールし、すべての人に安心して働いてほしいという場合は、アライを立てるのがよいでしょう。アライとは、英語の「ally=同盟を結ぶ」が由来の言葉で、セクシュアルマイノリティーを理解し支援する人のことを指します。

かつては「セクシュアルマイノリティーの当事者ではないが、その気持ちに寄り添い支援する者」といった意味で使われてきましたが、最近ではセクシュアルマイノリティー当事者のアライも増えてきています。当事者同士もLGBTQ+すべてを把握しているとは限らず、時に理解が足りずに相手を傷つけてしまうことがあるからです。

目印としてアライの方はLGBTQ+を表すレインボーフラッグモチーフのものを見えるところに掲げている企業もあります。必ずしも取り入れなくてはいけないわけではありませんが、とにかく理解者がいるということを伝えること、そして決して孤立しないようにすることが第一といえるでしょう。

毎年GWに開催されている(2020年はコロナ感染拡大防止のため中止)「東京レインボープライド」というイベントに協賛するというのも、LGBTQ+への理解が高いことをアピールするには有効です。

それから、同性のパートナーをもつ者に対して福利厚生を適用させることです。

2015年11月には、渋谷区、世田谷区において同性パートナーシップを認定する書類が発行されるようになり、2017年には大阪市が全国で初めて、男性同士のカップルを里親制度のひとつである「養育里親」として認め、話題になりました。

そのほかにも堺市、熊本市、横須賀市など、同性パートナーシップを証明する制度を取り入れる自治体は年々増えています。少なくともこういった形で認知されている同性カップルに関しては、もはや婚姻関係にあるものと同等と見なして問題はないのではないでしょうか。

ただ、課題になるのは、証明書などが存在しない同性カップルに対して福利厚生を適用させるかどうかという点です。もちろん、事実婚の異性カップルを適用させている企業は、同等の条件をもとに同性カップルも適用させた方がよいでしょう。

しかし当事者が同性パートナーシップを証明する制度を取り入れている自治体の管轄外のエリアに住んでおり、またはなんらかの理由(二人の関係性には関わりなく)で証明が不可能な状況にあり、事実婚の異性カップルにも福利厚生を適用させていない企業の場合、すべての同性カップルに福利厚生を適用させては、異性カップルへの差別になってしまいます。

どういった条件であれば当事者とそのパートナーを法律婚をしている異性夫婦と同等に見なすことができるのか、きちんと考えてルールを設ける必要があるでしょう。大事なのは異性カップルのみ、または同性カップルのみに利益、不利益のある状況を作らず、すべての人において平等であることです。

大事なのは気づきの繰り返し

ダイバーシティ

これからますます多様化が進んでいく社会において、ダイバーシティ、インクルージョンというキーワードは今以上にすべての企業が避けられない課題となってくるでしょう。中でもLGBTQ+をきちんと理解することはとても大切なことです。

もしかしたら「周りにいないから」「今後もセクシュアルマイノリティーの方は募集しないから」と考える企業や人事担当者もいるかもしれませんが、周りのだれかがカミングアウトしていないだけかもしれませんし、また、セクシュアルマイノリティーの方を採用するつもりがないという考えにいたっては、それこそがハラスメントになりうるので、今すぐに考えを改める必要があります。

ただ、決して腫れ物を扱うようには接しないでください。ハラスメントをしないことが職場の環境づくりの中で前提であり、そのためにはセクシュアルマイノリティーへの理解を深める必要がありますが、それでも時にはハラスメントと受け取られてしまうような発言、行動をしてしまうことがあるかもしれません。

特に日本においては古くから性別は男女ふたつであると考えられていたので、認識を変えることに時間がかかる方がいる可能性もあり、そういった方を逆に差別するというのも間違っています。

もしセクハラをしてしまったらきちんと自分や周りの人が気づいて改める、改めさせることが大事なのです。失敗してしまったらその都度振り返り、誤りだったと認めること、そしてそれを繰り返すことが偏見をなくす大きな一歩になるはずです。

「自分が当事者だったらどう思うか」という目線で行動すると、より広い視野で物事を捉えることができるかもしれません。セクシュアルマイノリティーの方だけでなく、すべての人が平等に認め合える社会を築くには、ひとりひとりの小さな努力が大事なのです。

タイトルとURLをコピーしました