【中小企業向け】インターンシップ制度とは?必要性とそのルール

インターンシップ 採用

新卒採用の一環として、インターンシップ制度を利用する企業が増えており、大企業ばかりではなく、中小企業でも導入が進んでいます。

といっても、これまでインターンシップに参加した学生の個人情報を採用選考に利用することは認められていませんでした。

しかし2023年4月(2025年卒見込みの学生が対象)から、特定の条件を満たせば、採用選考に利用できるようになる予定です。

これにより採用選考の実質的な開始時期が早まり、採用競争が一段と激しくなることが予想されます。

この記事では2023年4月からはじまる新たなインターンシップ制度のルールと、おもに中小企業にとっての必要性について解説します。

2023年4月からインターン制度が変化

握手

2023年4月から、「採用エントリーに関する案内の送付」「採用選考プロセスの一部免除」など、インターンシップで得た学生の個人情報を採用活動に直結させることができるようになります。

2022年現在は、たとえインターンに優秀な学生が参加していても、内々定や内定を出すことはできません。しかし目星をつけておき、新卒採用スタートと同時に内定を出すという「青田買い」がおこなわれているのが実情です。

ところが、2021年に開かれた経団連と大学による産学協議会で、開催するインターンの内容が特定の条件を満たしていれば、採用活動をスタートさせたあと、インターンシップで得た学生情報を活用してよいという合意にいたりました。

産学協議会は学生のキャリア形成支援を以下の4タイプに分類しています。

  1. オープン・カンパニー
  2. キャリア教育
  3. 汎用的能力・専門活用型インターンシップ
  4. 高度専門型インターンシップ

「オープン・カンパニー」は、企業・業界・仕事への理解促進を目的として学年を問わず学部生・大学院生双方に向けておこなわれる、「オープン・キャンパスの仕事版」です。

「キャリア教育」は、企業のプログラムや大学の授業を通じて、学生自身のキャリア開発への理解を深めたり能力開発をしたりするものです。おもに学部低学年生を対象におこなわれます。

「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」が、従来のインターンシップです。これは主に大学3・4年生および大学院生向けとされています。

また、おもに修士課程の学生を対象に企業と大学が協働でおこなう、より高度な内容のものを「高度専門型インターンシップ」と定めています。

学生・大学・企業がインターンシップをおこなう目的は、それぞれ以下のとおりです。

主体インターンシップの目的
学生就業体験・その仕事に就く能力が備わっているかを見極める
大学教育内容の充実
企業採用選考の評価材料の取得・即戦力となる人材の育成
(出典:経団連「採用と大学教育の未来に関する産学協議会 2021年度報告書 産学協働による自律的なキャリア形成の推進」文科省・厚労省・経産省「インターンシップ推進に当たっての基本的考え方」

インターンシップで得た学生の情報を選考に利用する条件

仕事中

「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」および「高度専門型インターンシップ」に参加した学生の情報を、その後の採用選考に活用するには特定の条件を満たす必要があります。

「高度専門型インターンシップ」は、就業体験をおこなうこと以外の条件は現在も議論されており、明確になっていません。

「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」は、以下の5つの項目が条件に設定されています。

  1. 期間
  2. 内容
  3. 実施時期
  4. 実施後のフィードバック
  5. 情報開示

上記の5項目を満たすことで「産学協議会基準準拠マーク」を表示可能です。

それぞれの項目について解説します。

期間

汎用的能力活用型インターンシップは5日間以上、専門活用型インターンシップは2週間以上の実施期間が必須とされています。

つまり「1dayインターンシップ」では、学生の個人情報を採用選考に活用できないということです。

内容

インターンシップ実施期間のうち、半分以上の日数は職場での業務体験にあてる必要があります。

原則としてオフィスでのインターンが求められますが、平常時からテレワーク主体の職場であればリモートでのインターン実施も認められます。

実施時期

学業を優先する観点から、インターンシップの実施時期は「夏休み」「冬休み」「入試休み」「春休み」の長期休みに実施する必要があります。

実施後のフィードバック

インターンシップ終了後に、企業から学生に対するフィードバックをおこなうことが必要です。

フィードバックの内容は、就業体験を通じてわかった参加学生の「良いところ」や「さらに身につけるとよい点」などについて、定性的なアドバイスをおこなうことと定められています。

たとえば「内々定を伝える」など選考に関する内容を伝えたり、インターン中の行動に点数をつけるなどの定量的評価をおこなったりすることは「フィードバック」とは認められません。

情報開示

学生に向けたインターンシップの募集要項に、必要な情報を記載することが求められます。具体的には、以下の9つの項目をホームページやインターン募集サイトなどで明示しなければなりません。

1. プログラムの趣旨(目的)
2. 実施時期・期間、場所、募集人数、選抜方法、無給/有給等
3. 就業体験の内容(受入れ職場に関する情報や事前学習・事後学習を合わせたプログラム全体の概要を含む)
4. 就業体験を行う際に必要な(求められる)能力
5. インターンシップにおけるフィードバック
6. 採用活動開始以降に限り、インターンシップを通じて取得した学生情報を活用する旨(具体的な活用の内容も記載することが望ましい)
7. 当該年度のインターンシップ実施計画(時期・回数・規模等)
8. インターンシップ実施に係る実績概要(過去2~3年程度)
9. 採用選考活動等の実績概要

採用と大学教育の未来に関する産学協議会 2021年度報告書 産学協働による自律的なキャリア形成の推進

ただし、インターンを大学が主導する場合は、「採用選考活動等の実績概要」を公開する必要はありません。

その他の注意事項

学生の情報を採用選考に活用する条件には含まれませんが、インターン生に対して給与を支払う必要があるケースがあります。 インターンシップは基本的に無給で実施しますが、インターンに参加した学生が一般の社員と同じ業務に携わる場合は、有給で雇用契約を結ぶことが求められます。

中小企業とインターンシップ

チームメイト

2021年10月時点で、インターンシップに参加したことのある学生の割合は、23卒学生(当時大学3年生)の83.6%、平均参加社数は4.4社でした(出典:マイナビキャリアリサーチラボ「2023年卒大学生インターンシップ調査~中間総括~」より)。

また、インターンシップやそれに類する取り組みを導入した企業の割合は、中小企業でも全体の55.2%と過半数を超えています(出典:ダイヤモンド・ヒューマンリソース「22卒 ダイヤモンド就活ナビ就活意識調査」p.11より)。

このようにインターンシップを導入する企業が増えた背景には、新卒採用の期間が短くなってきたことがあります。期間が短くなれば、それだけ学生が検討できる企業の数も減ってしまいます。

各企業は優秀な人材を確保するため、採用活動のスタート前に意欲と能力が高い学生との接点を持つ機会としてインターンシップを活用しているのです。

中小企業にとってのメリット

中小企業がインターンシップ制度を取り入れるメリットは、以下の2点が挙げられます。

  1. ミスマッチ人材の採用を防げる
  2. 採用後の早期離職を防止できる

インターン中の学生の様子から、企業のカルチャーや理念、業務内容などに適しているかをある程度判断可能です。

また、インターンシップを通じて企業風土に触れてもらうことにより、学生が自分に合った企業かどうかを判断することもできます。

これによりミスマッチ人材の採用、および採用・育成コストをかけた人材の早期離職が防げるでしょう。

「なんとなく」ではインターンシップの効果は見込めない

中小企業がインターンシップ制度を活用して優秀な人材を採用するには、集客と学生へのフォローが重要です。

「他社も実施しているから」「なんとなく良さそうだから」といった認識で実施するのではなく、明確な集客プランを練らなければ参加者は集まりません。

また優秀な学生には、インターン後も継続的なフォローをおこなわなければ、より手厚いサポートをしてくれる企業や、より条件のよい企業へ就職してしまう可能性があります。

インターンシップで効果をあげるには、費用や工数などそれなりのコストがかかります。そのため実施前に社内で目的を明確にし、どう開催すべきかしっかり検討することを推奨します。

この記事を書いた人
イワタ ヨウスケ

大学時代は外国語、宗教関連の研究に従事。コーポレートサイトやWebメディアのライティング、書籍の出版に携わる。好きな動物は猫。ちゅ〜るは歌いながらあげる派。

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