採用ペルソナの作り方・テンプレートシートを大公開!

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人材採用の確実性を高めることは、経営上の大きな課題であり、各企業において多種多様な採用の方法論が取り入れられています。なかでも実践しやすい手段として、スタンダードになりつつあるのが「ペルソナ」の設定です。

採用においてペルソナを設定することで、どのような効果が期待できるのでしょうか。この記事では、ペルソナ設定の意義をふまえ、実際の作り方や設計時のテンプレートを紹介していきます。

ペルソナとは

考える人

ペルソナとはもともと「仮面」を表す言葉であり、とくに社会学や心理学において「その人が公的な場で発揮する表向きの性格」といった意味合いで用いられてきました。

ここから転じて、現在のビジネスシーンにおいては「商品やサービスのターゲット像を、具体的な人物設定に落とし込んだもの」として、主にマーケティングの場面で活用されています。

マーケティングにおけるペルソナ設定の目的は、「どのような人が、どういった場面で自社の商品・サービスを求めているのか」を見通すことにあります。これにより、販促や商品開発の方針を定める際、具体的なニーズを反映しやすくなるのです。

このように、「自社の特性と相手のニーズ」との間にあるギャップを埋めることが、ペルソナ設定の主眼といえるでしょう。

現在ではこうした効果が広く知られるようになり、採用の方法論としてもペルソナ設定が頻用されはじめています。そのケースでは、自社の環境において活躍しうる人物像を明確にすることにより、採用方針を担当者間で共有し、「採用のミスマッチを防ぐこと」が最大の目的とされているようです。

ペルソナとターゲットの違い

「ペルソナ」と似た用法の言葉として、「ターゲット」が挙げられます。いずれもマーケティングや採用において、「自社に合った相手」のイメージをブラッシュアップする際に用いられる言葉です。

大きな違いとしては、ターゲット設定においては年齢層や興味関心、居住エリアといった「属性」あるいは「共通項」に焦点をあてるのに対し、ペルソナ設定においては「架空の個人」の特性を描出していく点が挙げられるでしょう。

たとえばマーケティングにおけるターゲット設定は、「都心エリアに住む」「40代の独身男性」「小物や靴にこだわりがある」というように、商品・サービスの主要な受け手を共通項によって限定していく方法が一般的です。

一方のペルソナは、「46歳の独身男性」「東京都杉並区在住」「金融関連企業に勤務、年収800万円」「趣味は映画鑑賞、ワイン」など、具体的な個人の像を設計していきます。

こうした流れは採用の場面でも基本的に同様であり、「ターゲット設定」が年齢層やスキルといった要件定義を指すのに対し、「ペルソナ設定」は具体的な人物の描出を主旨としています。

採用におけるペルソナ設定の意義

面接

採用活動においては、求める人材のイメージを明確にすることが求められます。その際、ペルソナを設定することにより、以下のようなメリットが生じると考えられるでしょう。

人事担当者間の認識をすり合わせられる

採用担当者が複数いる場合、求める人材についてのイメージが相互に異なっていると、選考過程において担当者ごとに偏りが生じ、採用が効率的に進まない可能性があります。

これを防ぐためには、明確な採用基準を共有する必要がありますが、要件を文言でまとめただけでは、具体的なイメージに齟齬が生じることもあるでしょう。ペルソナを設定することにより、求める人材を「具体的な人物」として強い印象とともに把握でき、担当者間での共有がスムーズになると考えられます。

自社の現状認識につながる

採用ミスマッチを防ぎ、入社後のスムーズな定着を促すには、事前に「自社の環境において能力を発揮できるのはどのような人材か」を入念に検証しておく必要があります。この点を浮き彫りにするうえでは、まず「自社の環境や特性」についてあらためて客観視することが求められるでしょう。

つまりペルソナを設定するプロセスにおいては、自社の現状を再認する視点が欠かせません。この振り返りのプロセスを通じて、自社の課題や強みを捉えなおし、今後の発展のために必要な要素を洗い出していけると考えられます。

募集時の要件定義がスムーズになる

採用サイトや募集要項などにおいて、自社の特徴やアピールポイントを打ち出す際には、「その情報を誰に受け取ってほしいか」をイメージすることが大切です。この点が明確になっていないと、「求める人材」と「募集の内容」との間にギャップが生じ、本来の対象にうまく情報が伝えられない可能性もあります。

ペルソナを通じて求める人物像を具体化しておくことで、実際に募集をかける際にも要項の作成などが効率的に進められるでしょう。設定されたペルソナを「情報の受け手」として想定することで、見てほしいポイントを整理でき、潜在的な採用対象に対する的確な訴求が可能になると考えられます。

採用に向けたペルソナの作り方

人材マッチング

採用活動においてペルソナを設定する際には、自社に必要な人材を定義することが求められますが、そのためにはまず自社の現状認識が欠かせません。自社がどのような環境にあり、そこで成果を出せる人材にはどのような特性があるのかを見定めたうえで、具体的なペルソナを作っていくことが必要です。

以下では具体的に、採用活動におけるペルソナ設定の流れを解説していきます。

社内のヒアリング

まずは実際に募集をかける部署やチームにおいて、現場の声を集めていきましょう。

その際、部署の責任者を中心に、「誰が成果をあげているか」「その人のどのような部分が成果につながっているか」を入念にヒアリングするとよいでしょう。「現状で成果を出している人物」をイメージしながらペルソナを設定していく方法は、1つの有効な手段です。

あるいは、「現状では足りていない要素」からペルソナを作っていく方法も考えられます。そのためには、責任者のほか現場全体の意見を吸い上げ、業務におけるネックや、改善すべきポイントを整理していくことが求められます。

採用方針の明確化

現場へのヒアリングを通じて得られた意見を整理し、「現状の組織に何が必要か」を検証していきましょう。課題の解決や組織の発展に必要なポイントを抽出したうえで、「どの要素を優先して採用活動を進めるか」という方針を明確にすることが大切です。

さらに、採用方針の取り決めと並行して、採用やその後にかかるコストなどを鑑みながら、実際に募集する人員数や給与形態といった形式面についても検討していくとよいでしょう。

求める人材の定義

打ち出した採用方針に照らしながら、必須となるスキルやマインドセット、経験などについて具体的に定義づけていきましょう。

要件をまとめていく際には、それぞれの優先順位を明確にしておくことが重要です。「MUST(必須)」「WANT(あると望ましい)」というように、自社の環境やニーズに合わせて整理し、リスト化していくとよいでしょう。

ペルソナの作成

求める人材についての要件定義をふまえ、実際のペルソナへと落とし込んでいきます。年齢や職歴、資格といった形式的な属性はもちろん、仕事に対する価値観や趣味など、人柄についてのイメージをもちやすいよう設定していくとよいでしょう。後述するように、作成の際には「ペルソナシート」などのフォーマットを用意しておくとスムーズです。

状況に合わせて、ペルソナを複数設定しておくことも有効でしょう。求める要素が多岐にわたる場合など、数人分用意することにより、個々の要件を反映しやすくなると考えられます。

作成したペルソナは、人事担当者はもちろん、実際に募集を行う部署の責任者などにも共有し、現場とのイメージをすり合わせておきましょう。設計した人物像について認識の相違がある場合には、問題点について見直し、必要に応じて修正を加えていくことが求められます。

ペルソナに応じた選考プロセスの整理

人材の要件定義や設定したペルソナを鑑みながら、求職者の目に触れる情報を整理していきます。「この人物はどのような点に企業としての魅力を感じるか」「どのような要素を重視して会社を選ぶか」を勘案しつつ、的確にアピールポイントを打ち出していきましょう。

さらに、面接時の質問事項や、選考基準について詳細を詰めていく際にも、設定したペルソナをモチーフとしながら具体的な流れをイメージしておくとよいでしょう。その際には、「用意したペルソナとどの程度合致しているか」を機械的に判断するのではなく、設定したペルソナに凝縮されている「求める要件」を見抜く観点が大切です。

ペルソナ作成・運用時の注意点

採用活動においてペルソナを作成する際には、思想や信条をはじめとするデリケートな内容についての設定が、実際の採用基準として適用されないよう注意する必要があります。

たとえば設定したペルソナにおいて「家族構成」についての項目がある場合、これに合わせて実際の面接時にも家族について質問してしまうと、「就職差別」につながる質問と受け取られかねません。

こうしたトラブルを防ぐためには、プライベートな項目について必要以上に設定することを避けることが望ましいでしょう。さらに、そのペルソナが「採用のイメージを共有するためのものであり、実際の採用基準ではない」ということを担当者間で十分に共有しておく必要があります。

なお、就職差別につながる質問事項については、厚生労働省の該当ページで概説されています。ペルソナを作成する段階から、こうした項目の設定については十分注意しておきましょう。

採用に役立つペルソナシートの例

ペルソナシート作成

ペルソナを設定する方法に決まった形式はありませんが、必要事項を記入するための「ペルソナシート」を用意しておくと、作成がスムーズになります。以下では、ペルソナシートの記入例と、テンプレートを紹介します。

新卒採用におけるペルソナシートの記入例

新卒採用を行う際のペルソナシートの例として、次のようなモデルケースを掲示します。広告代理店が新卒採用を行う際に、「向上心」や「競争心」といったマインドセット面を重視して作成したと想定しました。

中途採用におけるペルソナシートの記入例

同様に、中途採用におけるペルソナシートの例を掲載します。こちらは、Web制作会社が中途採用を行う際、スキル面を重視してペルソナを作成したケースを想定しています。

ペルソナシートのテンプレート

実際のペルソナ作成に活用していただけるよう、新卒・中途採用のそれぞれについて、ペルソナシートのテンプレートを掲示します。

なお、上のテンプレートはあくまで汎用性を重視したフォーマットですので、作成時には自社の環境やニーズに合わせてカスタマイズすることが望ましいでしょう。求める人材を的確に反映できるよう、シートの項目や形式を工夫していくことが大切です。

この記事を書いた人
鹿嶋祥馬

大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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