テレワーク・リモートワーク導入企業のメリットは採用活動にも表れる!?

テレワーク 採用

政府による働き方改革の推進や、新型コロナウイルス感染症の影響により、近年ではテレワークを導入する企業が珍しくなくなりました。

これにともない、働き方に対する就業者の意識にも変化が見られ、就職活動においてテレワーク環境を重視する傾向が見受けられます。

この記事では、現状におけるテレワークの実施状況や、リモート勤務に対する求職者の意識の変化をふまえ、採用活動におけるメリットや企業による実践例を紹介していきます。

就職活動において高まるテレワークの重要性

テレワーク

テレワークの普及は採用シーンにも大きな影響を及ぼしており、現在では「リモート勤務体制の有無」が採用活動を左右する傾向が強まっています。

たとえば転職支援サービス「doda(デューダ)」の発表によれば、20代~30代のdoda会員のうち、50.4%がテレワーク・リモートワークの環境を転職時の検討要因に挙げました(2021年10月)。

また、同サービス上でユーザーが頻繁に検索しているキーワードとして、「在宅勤務」が1位、「フルリモート」が2位にランクイン(2021年11月)。リモート環境に対する関心の高さが如実に表れています。

(参照:doda「リモートワーク・テレワーク継続宣言!いまこそ働き方改革を進める先進的企業の求人特集」

同様の傾向は中途採用だけではなく、新卒採用の場面にも当てはまります。就職支援サービスを手がける「株式会社学情」が2023年度の新卒者を対象に行ったアンケートにおいては、入社する企業にテレワークの制度があった場合に「利用したい」という回答者が7割に上りました。

一方で、同調査においては、入社後の働き方として主に「出社」を希望する割合が半数を超えています。つまり新卒者のニーズとして、「入社してしばらくは対面でコミュニケーションを取りたいが、いずれはテレワークを利用したい」という希望が窺えます。

(参照:株式会社学情「2023年卒学生の意識調査(入社後の働き方) 2022年12月版」内PDF資料「2023年卒学生の意識調査(入社後の働き方) 2022年12月版」)

まずは同僚や上司と実際に顔を合わせ、職場の空気に慣れたあと、リモート勤務を含めた働き方の選択肢を検討していくという流れは、求職者が企業に求める環境として、今後いっそうスタンダードになっていくかもしれません。

総じて、ライフスタイルの変化などを含む長期的なキャリアを考慮したときに、テレワークの制度が「その職場で働きつづけるための保険」として機能しうるのだと考えられます。

リモート勤務利用者の8割が継続を希望

コロナ禍のもとでテレワークを導入した企業のうちには、アフターコロナを見据えて徐々に出社形態へと切り替える動きも見られます。一方で、コロナ収束後もテレワーク継続の意向を示す企業も多く、今後は勤務形態をめぐる方針が企業間で大きく分岐していく可能性もあるでしょう。

内閣府の調査によれば、2022年6月の段階で、テレワークを部分的にでも取り入れている就業者の割合は30.6%でした。東京23区に限ると50.6%であり、人口過密地域においてとくに多く導入されていることが窺えます。

(参照:内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」内PDF資料「第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」)

また、国土交通省による2021年の調査では、雇用型就業者のうち「勤務先にテレワークの制度が用意されている」と答えた人の割合は40%に上りました。これは2019年と比べてほぼ倍の割合であり、コロナ禍を契機にリモート勤務を導入する企業が急増したことを示しています。

こうした対応を「感染症の拡大にともなう暫定的な措置」とする向きもありますが、働く側の意識としては、今後もテレワークを「常態」にしていきたいという希望が強く見られます。

国土交通省の同調査では、テレワーク導入企業で働く雇用型就業者の84%が、「新型コロナウイルス感染症が収束した場合にもテレワークを継続したい」との意向を示しました。その理由としては、通勤の負担軽減や、時間の有効活用と、通勤にかかわる内容が約7割を占めています。

さらに勤務先でテレワークが認められていない就業者においても、「今後制度が認められた場合に利用したい」とした回答者の割合は51.9%と、過半数を占めました。

(参照:国土交通省「報道発表資料:「テレワーク」実施者の割合が昨年度よりさらに増加!」内PDF資料「調査結果(概要版)」)

こうしたデータからは、就業者や求職者にとってテレワークが「アフターコロナのスタンダード」として捉えられていることが窺えるでしょう。テレワークの導入は、以前の職場で出社を主としていた求職者にも、リモート勤務を利用していた求職者にも、有効なアピールポイントになると考えられます。

テレワーク導入が採用活動にもたらすメリット

親子

上述のデータからは、テレワーク環境が働く側にとって非常に重要なポイントと見なされていることが読み取れます。以下ではより詳しく、テレワーク導入が採用活動にもたらすメリットについて解説していきます。

テレワーク環境の整備状況が大きなアピールポイントに

先の国土交通省の資料では、2021年10月の段階で、業種や環境などの問題から「勤務先がテレワークをほとんど実施できていない」と回答する就業者が65%を超えました。テレワーク実施に消極的な企業や、コロナ収束を見据えて出社体制へと切り替えていく企業も多いなか、今後もリモート勤務を積極的に推進していく企業には明確なアドバンテージが生まれるでしょう。

さらに、テレワークの制度があるだけではなく、「業務やコミュニケーションを円滑に進められる環境が整っているか」も、求職者にとって重要なチェックポイントです。現状のところ、勤務先のテレワーク環境に対して不備や不足を感じている就業者は珍しくありません。

たとえば先の調査においては、職場のテレワーク体制の整備状況について、柔軟な働き方を実現するための規定が「十分な水準にある」とした回答者は4割に及びません。その他、人事評価制度やICT環境などについても、十分な水準と答えた割合は3割に達しませんでした。

こうした現状をふまえると、テレワークをめぐる制度面・環境面の整備を進めることで、働く側にとってより魅力的な条件を提示できるようになると考えられるでしょう。

エリアを問わない採用活動が可能

採用活動における地理的制約を減らせる点も、テレワーク導入の大きなメリットです。採用エリアの拡大は、それだけ候補者のパイを広げることにつながり、これまでにない人材とマッチングできる可能性も高まるはずです。

たとえば専門的なスキルを有しているにもかかわらず、居住地の都合でスキルに合った就職先を見つけられずにいる求職者など、スキルと環境とのギャップに悩んでいる層にもリーチをかけやすくなるでしょう。

求職者にとっても、入社後の地理的な自由度が担保されていることは大きな魅力です。転勤にともなう転居などのリスクを恐れる必要がなくなり、より柔軟にライフプランを設計できると考えられます。キャリアを見通しやすい環境を用意することで、入社後の離職率を低下させる効果も見込めるでしょう。

就業形態の柔軟性がもたらす人材の多様性

地理的なメリットを除いても、テレワークの導入は多様な求職者からの応募につながると考えられます。それまでテレワーク導入企業に勤務していた人材のほか、フリーランスを経験し、通勤から自由な働き方を求めている人材、家事や育児、介護との兼ね合いを重視する人材など、さまざまな求職者のニーズに応えやすくなるでしょう。

採用活動において働きやすさを訴求するうえでは、リモート環境の整備とともに、フレックスタイムなど時間面の融通を利かせることも重要です。働きやすい職場づくりの一環としてテレワーク制度を導入し、同様に勤務体系や休暇制度などの整備も進めていくことで、より多くの求職者にとって魅力的な環境を作っていけるでしょう。

助成金の活用

テレワークをはじめとする多様な働き方への対応は、政府によっても強く推進されており、制度導入にともなう経費などを対象とした支援制度がさまざまに用意されています。

たとえば厚生労働省の「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」は、テレワーク導入により人材確保や雇用管理の面で成果をあげた企業を対象とする助成金です。申請が認められると、環境構築に要した費用の一部が補助されます。

(参照:厚生労働省「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」)

その他、IT機器の導入を広く対象とする経済産業省の「IT導入補助金」や、東京都の「テレワーク促進助成金」など、政府や自治体による幅広い支援が行われています。

年度によって内容に変更が生じる可能性はあるものの、費用を抑えながら職場環境を整備できるため、テレワークの導入を検討する際には申請可能な制度を入念に調べておくとよいでしょう。

テレワーク導入により採用・人事面で成果をあげた企業例

PCで作業

テレワーク制度を取り入れることで、残業時間の短縮や生産性の向上といった効果をあげている企業は多く見られます。以下ではそのうち、採用や人事の面で改善が見られた企業の例を紹介していきます。

ICT活用の一環としてのリモート環境整備

地盤改良工事の設計から施工・管理、コンサルティングを請け負う「株式会社ワイズ技研」は、2020年2月からテレワークを実施。事務職の求人においてテレワーク導入の旨を訴求したところ、求人応募数が倍増するという効果が得られました。

リモート勤務を導入しているのは主にバックオフィスの業務ですが、環境整備の影響は業務の枠を越えて波及しています。ZoomやHangOutといったコミュニケーションツールや、クラウドシステムを活用することで、現場の業務においても資料の共有や報告書の提出などの面で大幅な効率化を達成しているのです。

クラウドサービスなどを通じた社内共有のシステムが、組織の生産性向上に大きく貢献している現在では、テレワーク環境の整備と、ICT活用による業務効率化のプロセスは表裏一体の関係にあるといえます。上の例は、テレワークを最終的な目的とするのではなく、あくまで業務効率化の一環として進めることに成功した事例といえるでしょう。

(参照:TOKYOはたらくネット「テレワーク業界別ハンドブック」内PDF資料「TELEWORK活用ヒント 建設業」)

(参照:一般社団法人人材サービス産業協議会「「テレワーク導入で採用力&定着率UP採用支援ガイドブック」リリースのお知らせ」内PDF資料「テレワーク導入で採用力&定着率UP 採用支援ガイドブック」)

快適なリモート勤務環境が離職率を低減

デジタルビジネスの支援を行う「株式会社メンバーズ」の子会社として、主にシステム開発を手がける「メンバーズエッジカンパニー」は、コロナ禍以前の2018年から完全在宅勤務の社員の採用を開始。地方においてIT関連の人材が職を見つけにくい環境に置かれていることに着目し、リモート勤務や在宅勤務の従業員がオフィス勤務と同等に働ける環境を整えました。

さらに、離れて働く社員間の円満な関係構築のために、メンバーからの感謝の気持ちが少額のインセンティブとして反映されるUnipos(ユニポス)株式会社の「ピアボーナス(R)」というシステムを導入しています。そのほかにも、オンラインでのラジオ体操や勉強会など、コミュニケーションを促すための工夫を実施。

結果として、郊外に移住してフルリモートで働く社員や、育児中の社員などさまざまな働き方のニーズに応えることに成功し、2020年度の離職率は3%と、IT業界としては相当に低い水準にまで抑えられています。

(参照:地方創生テレワーク「東京、地方、在宅関係なく「日本全国」で採用する。社員の7割が地方在住!」

テレワークの常態化により求人応募数向上

企業のデジタル化や職場環境の改善をサポートする「株式会社WORK SMILE LABO(ワークスマイルラボ)」は、子育て中の女性社員とその他社員の間に生じていたギャップの解消を目的に、テレワーク制度の試用を開始しました。

その結果、残業時間の削減とともに、売上高も向上するなどの成果が認められたことから、全社員がテレワークを利用できる体制へと移行していきます。クラウドを通じた労務管理や、PCログの管理、Web会議システムなどにより、リモート環境でも問題なく業務を進められる環境を構築しました。

採用活動においてもテレワーク環境を積極的に訴求した結果、中途採用で前年比180%の求人応募数を獲得。求職者からの評価も高まっており、山陽新聞が2023年の新卒者向けに実施した地元企業の就職希望ランキングではトップに立っています。

(参照:厚生労働省 テレワーク総合ポータル「企業の取組み事例紹介」内PDF資料「株式会社WORK SMILE LABO」)

(参照:山陽新聞デジタル|さんデジ「就活 総合ランキング」

リモート環境の整備は感染症の拡大とともに社会的な急務とされ、普及するにつれてその有用性が広く評価されるようになりました。一方で、それ以前からテレワーク導入による成果はさまざまな企業において認められており、感染症対策という点を除いても、企業と就業者の双方にメリットをもたらす制度だといえるでしょう。

先述の求職者の意識調査からも見て取れるように、感染症の影響が収束した場合にも、テレワークに対する働く側のニーズは高いままであると考えられます。業務のデジタル化や、就業規則の見直しなど、職場環境改善の一環としてテレワークを導入することで、生産性の向上から求人応募数の増加まで、多面的な効果が期待できます。

この記事を書いた人
鹿嶋祥馬

大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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