残業は頼める?残業代の支払い義務は?「試用期間」の定義とは

雇用契約書 採用

人材を採用した際に、その従業員と企業間に契約内容などにおいて大きな齟齬がないかを確認するための大切な期間として、「試用期間」を設ける企業は多く存在します。法律上、試用期間の設定は義務づけられていませんが、実際には73.2%もの企業(厚生労働省「労働政策審議会労働条件分化科会 第47回資料」参照)が試用期間を定めているのをご存じですか?なお、試用期間中の待遇は企業によってさまざまです。

しかし、これから整備をしていく予定の企業にとっては「そもそも試用期間中とは?」ということから疑問かもしれません。「試用期間に残業をお願いしてもいいのか」「残業代は発生するのか」と頭を抱える企業も少なくないでしょう。そこで、今回は試用期間中の社員に対する残業にフォーカスし、法律に触れながら残業代の支払いに関する具体的な話まで分かりやすく解説します。

※本記事における「残業」とは、「1日8時間、1週間40 時間」の法定労働時間を超えた労働時間と定義しています。

「試用期間」とは?

握手

「試用期間」とは、企業側が採用した人材の適性をみるために設けた期間を指します。3カ月~6カ月間と定めている場合が多く、最長1年が限度です。また、試用期間は企業側のための期間と思われがちですが、労働者側も職務内容や社風を確認できる大切な期間です。相互のマッチングを図るためには必要不可欠な期間なので、担当者は正しい知識を身に付けましょう。

加えて、試用期間の条件(給与・残業代の支給方法・福利厚生など)は、求人票をはじめ、就業規則や労働契約書への明示が必須です。仮に、試用期間中の諸条件を明示していなかった場合、「入社したら思っていた条件と違った」という理由からトラブルに発展しかねません。面接時にも試用期間の有無・待遇面の詳細はきちんと伝え、齟齬がないようにしておくのがベターです。

一方で、諸条件は企業に一任されているからといって「社会保険なし」や、「雇用保険に加入させない」という対応はできません。各種社会保険は、通常の労働者と同様の基準で加入させる必要があるので注意しましょう。

「試用期間」の延長・解雇は可能?

結論からお伝えすると、試用期間の延長は難しく、解雇は正当な理由があれば可能です。では、それぞれ詳細に見ていきましょう。

「試用期間」の延長について

一般的な使用期間は、3カ月~6カ月と言われています。最長でも1年が限度とされていますが、法的拘束力はありません。そのため、以下の条件を満たすことができれば試用期間の延長ができます。しかし、なかなか条件を満たすことは難しく、延長が認められないケースがほとんどなのが実情です。

●試用期間の延長が認められる場合

  • 勤務態度や勤怠に関して明らかな問題ととれる合理的理由がある
  • 就業規則内に試用期間の延長に関して明記されている
  • 労働者への事前通告・合意がある

「試用期間」の解雇について

試用期間中には「解約権留保付雇用契約」を結び、解雇することはできます。解約権留保付雇用契約とは、試用期間中の解雇は留保された解約権を行使する性質をもつという内容で、つまり、試用期間中に就業規則などに明示している解雇事由に触れるようなことがあれば、企業は労働者との労働契約を解約できるということです。「社風があわない」「仕事を覚えるペースが遅い」などの理由で行使できる権利ではありません。

就業規則にのっとり、以下のように正当な理由があれば解雇ができる場合があります。一方で、解雇を伝えたところ「試用期間だから理由をこじつけて解雇にしたのではないか?」といった不信感から、労働者と大きなトラブルになることも多い契約のひとつです。そうならないためにも、就業規則に「試用期間中の解雇条件」として明記することをおすすめします。

●試用期間中の解雇が認められる場合

  • 勤怠状況が著しく悪い場合
  • 履歴書・経歴書を詐称していた場合
  • 勤務態度や協調性が著しく欠けている事実がデータに残っている場合
  • 勤務態度に関する指導を何度もしたが改善されない場合

「試用期間」と「本採用」の違い

ここまで試用期間についてご紹介しましたが、期間中と本採用後の違いは何なのでしょうか。企業によっては給与額が異なったり、本採用になってから利用できる福利厚生が増えたり、といった差をつけているところもあるかもしれません。しかし、最大の相違点は解雇通告の義務です。試用期間中は、「解約権留保付雇用契約」の効力によって、14日以内の解雇であれば労働基準法第20条に規定されている解雇の事前通告の規定は適用されません。(労働基準法第21条参照)ただし、「思っていたような人柄ではなかった」「スキルが不十分に感じる」といった企業都合の理由ではもちろん解雇できません。採用前の時点で企業と労働者間で共通認識として持っている解雇条件にあてはまった場合に限ります。双方が納得できるように採用前にしっかりと条件等をすり合わせておくようにしましょう。なお、雇用から14日を超えた場合は事前通告の義務が発生するので十分注意が必要です。

一方、本採用後は「解約権留保付雇用契約」は無効となりますので、必ず少なくとも30日より前の解雇告知が義務です。14日以内の解雇は告知義務なしとされるのは、あくまでも試用期間中の従業員が対象。担当者は、これらを正確に把握しておく必要があります。

「試用期間」の社員に残業のお願いは可能?

残業時間

試用期間中の社員に残業を頼むことは、法律上は問題がありません。そもそも、試用期間とは新入社員の裁量を見極めるために定められた期間なので、労働者は本採用時と同じように能力を発揮できるよう努めなくてはならないのです。

ただし残業を指示するにあたって「36協定」を結ぶ必要があります。「36協定」とは、労働基準法第36条により定められている労働時間に関する協定です。企業は1日8時間、週40時間の法定労働時間を超える場合は労働組合や労働者の代表と「時間外・休日労働に関する協定届」を書面にて結び、労働基準監督署へ届け出なくてはなりません。36協定を結ばないまま残業をさせてしまうと、法律違反となり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられる場合があるので気をつけましょう。

※「36協定」に関してさらに詳しい原文は、e-Govの「労働基準法」から閲覧できるので、ぜひこちらを参考にしてください。

残業を頼めるからといって、何時間でも青天井でお願いできるわけではありません。労働基準法では月間45時間以内、年間360時間以内までの残業が上限とされています。一方で、「システムに不具合が出てしまい対応せざるを得ない」「繁忙期にともない普段の2倍受注がある」など特別な理由がある場合は、36協定の「特別条項」にもとづき残業時間の延長が可能です。しかし、こちらも上限は決まっており、1カ月間の上限は100時間未満、1年間の上限は720時間以内、2カ月ないし6カ月間の時間外・休日労働時間の平均は月80時間以内という決まりがあります。さらに、月の残業が45時間を超えてよいのは6カ月までとなっているので気をつけましょう。

このように残業時間には制限が設けられています。働き方改革が唱えられている現代において、残業によって業務をさばくよりも、労働生産性をあげることが先決なのではないでしょうか。社員のワークライフバランスを考えながら、より生産性の高い組織を作っていくことが重要です。

「試用期間」の残業代は支払うべき?

給与明細

試用期間中は残業代を支払わなくてよいということはありません。残業をした労働者に対しては、雇用条件に関係なく労働契約書に基づいた残業代を支払う義務があります

また、残業代は1分単位で支給するよう法律で定められています。労働基準法の第24条の賃金に関する項目に「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」という記述があります。(e-Gov「労働基準法」参照)1分単位で労働時間を管理・計算し、全額を支払わなくてはならないということです。

また、固定残業代制(みなし残業)を採用している場合、みなし時間を超えた残業をした際に残業代を支払わなくてはなりません。固定残業代制(みなし残業)とは、あらかじめ想定される残業時間分の賃金を含めた給与を支払う制度のこと。20時間分をみなし残業とする企業もあれば、45時間分とする企業もあります。固定残業制=残業代を支払っているから追加分はないと考えている企業もありますが、法律違反となるので正しい認識を持ちましょう。

まとめ

試用期間中は本採用後と異なる待遇を設定している企業もあるため、残業に対する認識も曖昧になってしまいがちです。しかし、残業自体は36協定を結んでいればお願いすることができます。一方で、発生した残業代は全額支給する義務があるので留意してください。

業務内容や労働環境によっては、どこからが残業にあたるのか不明瞭な場合も存在するでしょう。認識に齟齬があると大きなトラブルに発展することもあるので、そうならないためにも、企業と労働者が共通認識を持つための就業規則の作成が必要不可欠です。試用期間に関して正しい知識を持ち、労働者がより働きやすい企業を目指しましょう。

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