社員のバックレに対して会社が取るべき行動とは

社員にバックレられた人離職

従業員の退職は雇用している企業や事業主にとっては悩みのタネです。しかし、終身雇用制度が崩れ、転職がポジティブに捉えられるようになった現代においては、アルバイトか正社員かを問わず従業員の退職は珍しくありません。退職に至る理由や、その際の態度は人によってさまざまですが、ときには「バックレ(無断欠勤からの退職)」をしてしまう従業員が現れる可能性もあります。

社員がバックレてしまうと、現場には大きな影響が出るでしょう。人手が減ることで他のメンバーにかかる負荷も大きくなりますし、昨日まで一緒に働いていた人間が突然姿を消すことでチームに少なからず動揺も走ります。雇用主にとっても、さまざまな対応が求められる頭の痛い事態です。

「あらかじめ辞意を伝え、雇用主との調整を経て、双方の都合に合わせて退職する」といった通常の退職者のような手順を踏まないバックレは、起きてしまうと対応に困るものです。バックレが起きてしまう前にどのような対応をすべきか知っておくことで、いざバックレが起きても冷静に対処することができるでしょう。

バックレた社員はいつから退職扱いにできる?

社員がバックレたからといって、即日退職扱いにできるわけではありません。「無断欠勤」となるとつい本人の勤務態度を責めたくなってしまうかもしれませんが、社員が無断で会社に来なくなってしまったとき、一番に疑うべきは何らかの事故に遭ったり、連絡ができないような不測の事態に陥ったりしているのではないかということです。特に一人暮らしの場合、自宅で誰にも気づかれず危険な状態になっている可能性も考えられます。

本人への連絡がつかないときは緊急連絡先や親元に連絡をしたり、実際に住居に行って安否を確認したりしましょう。場合によっては警察などに連絡をする必要も出てくるかもしれません。そのようなステップを経て、「自分の意思で無断欠勤をした」ということがわかってはじめて、退職手続きを検討します。

労働基準法の定めにより、労働者を解雇するには通常30日前には予告を行わなければなりません。これより短い日数で解雇をしようとする場合、30日から解雇日までの日数を引いた分の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。たとえば解雇日の10日前に予告した場合、「30日-10日=20日」分の平均賃金が必要です。

しかし、労働者に落ち度があると判断されるときは、「解雇予告除外認定」を受けることで即時解雇することが可能になります。解雇予告除外認定を受けるには、一定の基準を満たしている必要があります。特に以下のようなケースが基準とされています。

  1. 会社内における窃盗、横領、傷害等刑法犯に該当する行為があった場合
  2. 賭博や職場の風紀、規律を乱すような行為により、他の従業員に悪影響を及ぼす場合
  3. 採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合
  4. 他の事業へ転職した場合
  5. 2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
  6. 遅刻、欠勤が多く、数回にわたって注意を受けても改めない場合

バックレはこのうち⑤にあたります。バックレたあとに別の仕事に就いたことがわかっている場合は、④に該当します。またバックレたことで会社に損害が出た場合、懲戒解雇の対象となることもあります。

バックレた本人に連絡がつくようであれば退職届の提出を求めましょう。似たような書類に「退職願」がありますが、こちらは不要です。法的には退職届を提出しなくても、口頭で意思表示をすればよいとされていますが、「本人の意思で辞めた」ということを証明するために退職届を受け取るほうがベターです。書類を持っていれば、あとから「不当解雇だった」と訴えられるリスクを避けることができます。

バックレた社員に対して損害賠償を請求できる?

会社をバックレたからといって、その従業員に損害賠償を請求するのは難しい場合がほとんどです。損害賠償が認められるには、賠償の対象だと主張する損害が、社員のバックレによって引き起こされたという明確な因果関係を証明できなければなりません。

「具体的な損害」といっても、会社が社員にかけた教育費用や備品などは含まれません。たとえば何らかの資格を取らせるために会社が研修費用を負担していた社員がバックレた場合、その分の費用は無駄になってしまいます。企業としては痛い出費ですし、「損害だ!」と考えたくなるのもわかります。しかし労働者にとっては、研修を受けることや資格を取ることそのものが業務の一環です。備品を購入するのと同じく、会社が費用を負担することが当然であり、「損害」は存在していないと判断されます。

研修費を人質にとって「退職するならかかった費用を請求する」と要求するのは、金銭的な負担をチラつかせて雇用主が労働者を脅して会社に足止めしていると考えられます。これは、労働基準法16条で禁止されている事項です。

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

労働基準法第16条

ただし、雇用期間の定めがある場合や、業務内容が何らかの成果物の完成までを含んでいる場合、その途中でバックレた相手には「契約違反」として損害賠償を請求できる可能性があります。また業務に関わりのない個人的なセミナーなどの費用を会社が建て替えていた場合には、その分の請求が認められる場合もあります。

バックレた理由が、社内環境の悪さや、労働基準法に違反していることなどであると、労働者から逆に訴え返されるおそれもあるでしょう。裁判にかかる時間的・金銭的コストと賠償内容を天秤にかけると、訴えを起こさないほうが得なケースも少なくありません。

バックレた社員に給料や退職金を支払う義務はある?

給料(給与)とは原則として実行された役務の対価として支払われるものと考えられるため、バックレたとしても、それ以前の給与は支払わなければなりません。ただし、バックレが発生してから退職するまでの期間が自動で有給休暇扱いになるわけではないため、実際に働いた日数に応じた給料を支払えば問題ありません。

退職金についても社内の規定に従って通常通り支払うのが一般的です。ただし懲戒解雇処分とした場合、社内の規定に従って退職金が減額になる可能性もあります。まずは社内の規定がどのように定められているかを確認することが必要です。規定に定めがない場合は、原則として退職金を満額支払わなければなりません。

バックレが発生した原因を探り、労働環境の最適化を目指す

雇用側の視点に立つと、無断欠勤した挙げ句バックレるというのは許せない行為かもしれません。しかし、働いている環境に何の不満もなければ、そもそもバックレというリスクを犯してまで会社を抜け出そうと考える労働者はいないでしょう。バックレのような逸脱が起きたときは、働くチームの人間関係や、社内の労働環境に問題がないかを検討するよい機会にもなるはずです。

多くの場合、多少の不満は抱えていても上司や同僚などに相談し、通常の手順を踏んで退職に至るものです。それでもバックレが起きてしまったということは、会社への不満があっても相談することができない、退職の意思を伝えることができない、といったコミュニケーション不全に陥っている可能性も高いでしょう。

1人のバックレに複数の社員が後を追ってしまうことがないように、バックレが起きたらまずは現場の状態を確認し、必要があれば改善を図ることが求められます。

この記事を書いた人
okaryuto

筋トレを愛するパワー系ライター。『誠実・正確』な文章で、価値ある情報を必要な人に届けることを目指す。教育、出版、WEB業界をふらふらと渡り歩き、浅く広くさまざまな領域に首をつっこみ続けている。3匹のねこと暮らす根っからのねこ派。

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