辞めた部下が退職後もビジネスパートナーの関係で協力してくれる話

離職

部下と退職後も良好な関係を築けていますか?
辞めると決意した彼・彼女らを尊重し、新たなステージへと快く送り出すためにも、上司としては未練を残さず袂を分かつべきと勝手に思い込んではいませんか?
辞めた方々が優秀な人材であればなおさら、その先入観に囚われてはいけません。
まだまだ、貢献してくれる期待は持てます。
元々、エンゲージメントの高い社員はもちろん、会社に対して不平・不満をぶつけてくるようなタイプであっても意外と協力的に手助けしてくれることがあるのです。
たとえ、遺恨ある関係でさえも、やり方次第で在職中以上に仲良くなれることもあります。職場を離れるようになってから、忠義や恩返しを施してくれるケースは、決して珍しくありません。

本記事では、ずばりタイトルそのまま、辞めた部下が退職後もビジネスパートナーの関係で協力してくれる話をします。

かつて、志を同じくして励んだ仲間との絆は、そう脆いものではないはず。
いつだって、あなたの救世主になってくれる可能性はあるということを忘れないでくださいね。

AさんのSTORY.「突然、部下に退職を告げられた!」

突然の部下からの退職願い

「今月いっぱいで会社を辞めようと考えています」

コンスタントに成果を出し続け、部署の垣根はもちろん、お客様からも絶大な信頼を寄せている入社二年目の田中(仮名)の口から思いもよらない言葉が飛び出した。

まさしく緊急事態だ。何を言っているのか、一瞬私には理解できなかった。

「とりあえず、ゆっくり話そうか」

焦りを隠せないまま、そう伝えるのが精一杯。

ひとまず社内でもっとも狭い会議室を選択し、自販機のボタンを押している自分がいた。

用意した缶コーヒーは、必ずといっていいほど15時になると席を立つ彼がしばらくして連れてくる黄土色のデザインに微糖表示のそれ。奇しくも今、長針と短針が右に開いたまま90度を成そうとしている。私が無意識に彼のルーティンを演出するのを読んでの、退職申し出だったのだろうか。つくづく頭の切れる奴だ。

早速、本題に入った。

聞けば、キャリアアップを図るため、より高みを目指すためといったもので、彼ぐらいのポテンシャルなら、もっと大きな会社へと転職するのも特段おかしなことではなく自然な流れといってもいいだろう。ただ、一年は早すぎる。石の上にも三年だ。

そこに慰留のチャンスがないか打診しようと口唇を開いたその刹那、その持論がいかにも不毛な悪あがきに思えた。

何秒かの沈黙が流れた後、彼が再び喋る。いかにこの会社で恩恵を授かったか、感謝の意を述べる若き青年。じっと聞いていると弊社の将来の展望まで滔々と語り始めるではないか。彼の採用面接当時の雰囲気を思わせるぐらい、希望に満ちたエネルギーがその場に広がっていく。

不思議と脳裏に浮かんだのは「それほど会社のことを考えてくれているのになぜ?」よりも「本当にここではもうやりきったなんだな」という諦念だった。

私は引き留めないことにした。同時に、彼との接点だけは潰えることのないようしなければ、と方向転換。

彼がこの一年、どれだけ頑張ってくれたか、思いつくす限りの言葉でねぎらった。

いかに優秀か、いかに貢献してくれたか、汲めども尽きぬボキャブラリーでその功績を称えた。

すると、彼はこう言ってくれた。

「今後も何かあれば役に立てるように頑張ります」

その後、新天地でも活躍する彼とは定期的に食事をとる仲に。在職中よりも頻繁に交流の場を設けている。

副業の許可が下りていることもあり、彼に仕事を依頼することもしばしば。

やっぱり、そう易々と逃すべきじゃなかった(笑)。

彼の仕事ぶりは、依然目を見張るものなのである。

BさんのSTORY.「主婦の目線がさらなる力に!」

元社員が主婦目線で大活躍!

在職中の働きは唯一無二。決して慢心することなく気さくな性格でも慕われるコミュニケーション能力はもとより、人間関係の構築がとても上手な山田(仮名)だが、入社して五年経ったタイミングで主婦に専念することに。

資料作成においては彼女の右に出る者はいない。商品説明もプロフェッショナル。
いなくなることとなり寂しいのはもちろん、戦力的にも非常に残念。
惜しむらくは、プレイングマネージャーという立場であることも然り。

辞めてから数日は社内が多少なりとも混乱するだろう……と思いきや、彼女の引継ぎがこれまたお見事だったわけで、業務は円滑にまわっている。だからこそ、その存在の大きさが引き立つといっていいかもしれない。
上司である私は、しばらくして彼女へメールを送った。
社内の近況と、あらためて感謝と。
まもなく山田からの返信。
いやはや、企画のアイデア出しにも長けていたのは当然、承知済みだったが、ストックはおろか溢れんばかりの提言に、あらためて一緒に働きたいと、つい出戻りを乞う文面をドロップ。冷静になってさすがに申し訳ないことしたな、と謝辞のメールを再度送ろうとするさなか、委託業務ならOKとまさかのアンサー。

ということで、アクションは起こしてみるものだなと実感した次第であった。
実際、そのフローが定着してからというもの、売上は好調を維持。
生活様式に関わる商品・サービスを提供する会社ということもあり、主婦の目線が加わって予期せぬ具合に盤石の組織になったともいえる。
「環境が変わった分、新鮮な切り口で提案できる」というメリットを彼女が口にしていたのは印象的だったと思う。会社に在籍したことのあるメンバーであれば、その縁はきっと根強く、当たり前に「退職=人員が欠ける」では無いということが分かった点も収穫と捉えたい。

そして、主婦としての山田も偉大であることを、言わずもがな、忘れずにいたい。

CさんのSTORY.「SNSでの協力が心強い!」

SNSでかつて勤めた会社をお膳立てしてくれる女性

会社を辞めたあいつから、TwitterやFacebookでの招待があった。そういえば、何かあったらということで、退職日にアカウントを伝えていたのを思い出した。
私個人としては今後もお互いの近況などを知れる機会があればいいね、程度の温度感であったが、まさしく「いいね!」な状況が訪れることをその時はまだ知る由もない。

数日後、弊社の新サービスがローンチされることとなり、スタッフに頼みSNSで発信してもらった。せっかくなので私も個人アカウントで投稿。
そして次の日、何気なく携帯でSNS画面を開くと驚いたことに、件の新サービスに関する投稿がリツイートやいいね!で広くシェアされているのだ。
拡散力の源はあいつ。あらためてプロフィールを拝見すると、数々のフォロワーを抱えている、いわばインフルエンサーに近い存在だったことに気付く。
この慣れない事態のなか、終業後、あいつへ御礼の電話を入れた。
照れ屋なあいつが謙遜しながら、「これからも縁の下の力持ちで頑張ります」と言ってくれたのには、ちょっと泣きそうになった。
こうした仲間こそ、最強のビジネスパートナーであることをありありと感じる今日この頃。
さて、新商品に関する宣伝ツイートでもするか。

DさんのSTORY.「問題社員は積極的に引き留めよ!」

発狂する問題社員

在職中は問題児だったといってもいいかもしれない。

会社の方針に盾突くことは何度もあった。特に上司である自分とは取っ組み合いに発展しそうなぐらい険悪なムードすら漂わせたことがある。

いずれも、私の管理能力不足だ。

そんなあいつが辞めると申し出てきた。

普通なら本音ではせいせいするところだろうが、正直自分でもびっくりするほど寂しかったのを覚えている。

引き留めは無駄だと思いつつ、これまでどれだけ会社に役立っていたのか、どこを評価していたのか、今後期待していたことまで、満遍なく伝えていった。

そして謝った。

あいつは少し拍子抜けした表情を浮かべていた。

そりゃ、そうだ。

言うなれば天敵にこうも慰留されるとは考えてもみなかっただろう。

後で聞いた話によると、私が評価するポイントに対して、本人は絶対見てもらえていない部分と思っていたらしい。

遅ればせながら、いやもう遅かったが、最後の最後に信頼のようなものを寄せてくれたのだと。

あいつは退職後、何かと弊社のことを気にしてくれていた。

引継ぎをしっかり行ったことはもちろん、その後も何かと協力的である。

あいつのストロングポイントは、人脈と情報収集力。退職後、ビジネスパートナーとして交流を深めていくなかで、私にも人が集まるようになってきた。皮肉なのか素敵なのかは分からない。

直属の上司と部下にいざこざが生じることなんてよくある話だ。

が、そこに一本の信頼があれば、たちまち関係性は好転する。

部下の承認欲求をしっかり満たしてあげることは必須。

私の場合、土壇場で滑り込んだおかげで、退職後に良好な関係を築けた。そして業務においても良い方向へとつながっている。

問題児こそ積極的に引き留めた方がいい。終わりよければすべてよしとまでは言い過ぎかもしれないが、心を通わせることで、いくらでも光は射しこんでくるものなのだ。

部下とのつながりは退職後も大事にしよう!

退職後もビジネスパートナー

たとえ部下が辞めることになっても、そのピンチがチャンスに変わることは大いにあり得ます。
働き方改革が叫ばれるなか、退職した部下との交流もまた、ビジネスを飛躍させるための一つのカギになるのではないでしょうか。
属性がよりあやふやになってくるであろう未来に向けて、一度でも縁を深めた仲間とのコミュニケーションは地続きで絶やすことなく大事にしたいものですね。

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