面接で求職者の本音を聞き出すには?人柄がわかる質問集を紹介

採用面接 採用

採用過程において、面接は求職者の人柄に直接触れられる数少ない機会です。自社の発展に貢献してくれる人材を見極めるうえでは、ぜひとも求職者の「本音の部分」を引き出しておきたいところでしょう。

しかし、「ネガティブな側面をなるべく見せたくない」という心理から、求職者の中にはマニュアル的な対応が見られたり、話に脚色が加えられたりするケースもあり、「本来の姿」を見定めるのはそう簡単ではありません。

面接を形式的なものに終わらせず、企業側として知っておきたい部分を確認するためには、質問の方法や内容を工夫しながら、求職者の価値観に焦点を当てていく必要があるでしょう。

この記事では、求職者が本音で話すことのできる採用面接のポイントを整理したうえで、人柄を知るための質問を例示していきます。

求職者が本音で話すことのできない原因

本音を聞き出す面接

面接で知りたい内容を引き出せない場合、企業側と求職者側とで何らかのすれ違いが生じている可能性があります。大きな原因としては、面接に際しての心理的ギャップや、コミュニケーション上のミスマッチなどが考えられるでしょう。

ここでは、面接での率直な反応を阻害しうる要因について具体的に解説していきます。

求職者の緊張感や警戒感がほぐれていない

採用面接は、求職者にとって「失敗できない場面」です。そのため、「自分のいい面を積極的にアピールしよう」という方向よりも、「悪い面を見せないようにしよう」という心理が働くことも多くなります。こうしたリスク回避の意識は、緊張や警戒感を強め、本音を覆う防護壁となりえます。

緊張感や警戒感を解きほぐすためには、求職者の人間性や人柄を受容する空気を形成することが重要です。緊張をほぐすための「アイスブレイク」となるやり取りに時間をかけたり、求職者の話に対して共感的な態度を積極的に示したりすることで、「話を聞いてもらえる」という印象を与えることが、本音を引き出すための前提となるでしょう。

なお、「アイスブレイク」の重要性や具体的な取り入れ方については、こちらの記事で詳しく扱っております。ぜひ併せてご参照ください。

求職者側のハードル設定が高い

求職者が志望先で働くことに対して、あまりに高いハードルを設定していると、面接で「肩に力が入りすぎてしまう」状況に陥ることがあります。業務で求められる技能の水準を過剰に高く見積もっていたり、その業界や職種について現実とかけ離れた理想を抱いていたりすると、「いいところだけを見せなければ」という思いが強くなり、本来の姿を見せにくくなるかもしれません。

こうした認識のギャップは、入社後の不適応の原因にもなりえます。事前の対策として、求人サイトや会社説明会などを通じ、業務の雰囲気や求められている水準を適切に伝えておくことが大切です。それが難しい場合には、面接の場で直接「どのような業務を行い、どのような役割が期待されているか」をこちら側から説明しながら進行することも有効でしょう。

テンプレート的な質問に終始している

面接で質問する内容がオーソドックスなものばかりだと、やはり求職者の価値観や考え方を深く知ることも難しくなるでしょう。

志望動機やアピールポイントなど、面接で頻出する質問に対しては、あらかじめ求職者側も答えを用意していることが多いです。「すでにある答えをスムーズに提示できるか」も大事なチェックポイントではありますが、そこから理由や背景を掘り下げていくような工夫がないと、やり取りが形式的なものに終わってしまいます。

「知りたいこと」に焦点を合わせながら、あらかじめ質問内容を検討し、話の流れに応じて理解を深めるための問いを発していきましょう。

「何を知りたいか」が明確に伝わっていない

一般的に、面接においてより多くの情報を得るためには、「はい/いいえ」で答えられるクローズド・クエスチョンよりも、「なぜ」「どのように」を問うオープン・クエスチョンの方が適しています。展開に合わせてオープン・クエスチョンを重ねていくことで、求職者の価値観や思考様式について多くの情報を得られるでしょう。

ただし、オープン・クエスチョンには「答えの方向性が見えにくくなる」リスクも付いてまわります。漠然と「なぜ」と聞かれても、どういう角度から答えればよいのかがわからず、答えに窮してしまうこともあるでしょう。

そのため、問いが抽象的なものになる場合は、答えの具体例を示しながら問いを発するなど、面接官側がある程度筋道を立てる必要があります。たとえば志望動機について、「自己実現」という言葉が曖昧なまま使われている時、「あなたにとって、自己実現とはどのようなことを指しますか?」で終わらせてしまうと、方向性がやや掴みにくいかもしれません。「仕事での達成感やプライベートの充実など、自己実現に欠かせないと思うポイントを教えてください」などと付け加えることで、答えの着地点が見えやすくなるでしょう。

面接時に人柄を見せてもらうためのポイント

ポイント

面接で求職者に本来の姿を出してもらうためには、「自分を出しても大丈夫」という安心感を抱いてもらう必要があります。求職者の話に対し、興味を示しながら耳を傾ける姿勢を前面に出していきたいところです。以下では、そうした受容の姿勢を示す際に重要なポイントについて解説します。

相づちを積極的にうつ

採用面接という場面で、いきなり人柄をさらけ出すことは誰にとっても困難です。そのため、求職者の人柄を見せてもらうためには、裁量権のある面接官の方から積極的に共感の態度を示していくことが望ましいでしょう。

求職者の話に対して相づちを積極的にうつなど、「自発的に話すことを促せるか」が本来の人間性を垣間見るためのポイントになります。「なるほど」「そうなんですね」といった反応のほか、「それは面白い」など相手に関心を寄せていることを明確に示す反応を取っていきましょう。

さらに、面接をオンラインで実施する場合には、リアクションを大きめに取ることが望ましいです。Web面接は相手の表情や呼吸を細かく読み取ることが難しく、単調なやり取りになってしまうことも考えられるため、大きめかつ多めのリアクションを心がけるとよいでしょう。

面接官側から開示する姿勢を示す

面接官には基本的に「共感的な聞き手」としての立場が求められます。しかし一方で、ただ聞いているだけでは相手に「本当に話に乗ってくれているのだろうか」という不安を抱かせることもあるかもしれません。

面接官側も必要に応じて自らの情報を開示することで、場が温まり、相手が自分を出しやすい雰囲気が形成されると考えられます。もちろん、面接の目的は求職者の話を引き出すことですから、不必要に多くは語らず、相手の文脈に乗じ、話の流れを補強するような形でコミュニケーションを図りたいところです。

また、話の流れに合わせて業務内容や職場環境について話題に挙げることも、求職者側と認識をすり合わせるうえで有効でしょう。

本音を聞き出す質問例

Question

実際に、求職者の本音を聞き出すうえで有効な質問にはどのようなものがあるでしょう。

まず考えられるのは、「答える準備をしていない質問」を投げかける、という方向性です。あらかじめ用意された答えよりも、その場で考えられた答えの方が、本心は反映されやすいと考えられます。

ただし、あまりに突飛な内容について聞いてしまうと、質問の意図が伝わらず、やり取りが噛み合わなくなるかもしれません。さらに、プライベートに関わる内容を不必要に聞いてしまえば、ハラスメントにつながるリスクもあります。

本音を聞き出すためには、「テンプレートとは別の角度からの質問」も意識しつつ、「最終的に何を確認したいのか」を見失うことなく問いを深めていくことが大切です。

志望動機に関する質問

志望動機をめぐる質問は面接において必出であるために、多くの求職者が事前に答えを用意していると考えられます。しかし、問い方を変えてみることで、用意されたものとは別の要素に光を当てられるかもしれません。たとえば、以下のような質問が考えられるでしょう。

この会社にどのようなことを期待していますか?

会社に対するイメージや求職者の仕事観を、志望動機とは異なる角度から推し量るための質問です。通常、志望動機として用意されている答えは、「貢献する側」の視点から考えられているケースが多いですが、「何かを受け取る側」としての視点は想定されていない可能性も大いにあります。

求職者の心理からすれば給与などの条件面は挙げにくいと考えられますので、おのずと「どのような環境で、どのように働きたいか」といった角度から答えが導き出されることになるでしょう。

会社を選ぶ際に重視する点は何ですか?

志望動機そのものを聞く場合に比べ、仕事やキャリアに対する考え方に焦点を当てた質問です。「自社を選んだ理由」ではなく「就活一般における基準」を聞くことで、用意されたものとは異なる観点が提示されることもあるでしょう。

転職理由に関する質問

中途採用の場合、企業側としては転職理由を知っておきたいところでしょう。とはいえ転職の理由は頻出の質問であるために、あらかじめ答えが用意されており、「本当のところ」がわからないケースもしばしばです。質問の仕方を変えてみることで、別の角度からの答えを引き出してみましょう。

現段階で転職を選択したのはなぜですか?

転職理由そのものではなく、「なぜ今か」に重点を置いた聞き方です。転職のタイミングについては明確な理由づけが用意されていない可能性も高いため、「キャリア設計における自社の位置づけ」を知るうえで有効な質問となりえます。

質問する際に注意したいのは、「なぜ今でなくてはいけないのか」といったニュアンスが強く出ないようにすることです。「今でなくてもいいのでは」というように受け止められると、圧迫的な印象を与えかねないため、あくまで「キャリアの見通し」に関連した質問であることが相手に伝わるように聞く必要があります。面接の流れに合わせて、「キャリア設計やライフプランの視点からお答えください」などと補い、ある程度答えに筋道をつけるとよいでしょう。

「これがあれば前の会社に残ってもいい」というポイントはありますか?

前社に欠如していたポイントを間接的に問うことで、「働くにあたって譲れない要素」を読み取るための質問です。万が一「どんな条件でも残りたくない」といった趣旨の答えが返ってきた場合には、「とくに許容できないと感じるポイント」を複数挙げてもらうなどすれば、聞きたい内容を補うことができるでしょう。

仕事への向き合い方に関する質問

「その人が物事をどう捉え、何にやりがいを感じるか」といった仕事観についても、面接を通して確認しておきたいところです。

ご自身の人生のなかで大きな成功をした経験について、具体的なエピソードと、そこから得たものについて教えてください

採用面接においてしばしば聞かれる質問ですが、自身の経験をストーリーとして結びつける際には考え方や価値観が見えやすくなります。「物事をどう受け止め、どう行動につなげていくか」といった傾向を読み取るために、「挫折や困難を乗り越えた経験」「達成感を覚えた経験」など同種の質問を複数行うのもよいでしょう。

10年後に「こうなっていたい」というご自身のイメージについて教えてください/「将来こうはなりたくない」というイメージを教えてください

セルフイメージのネガ・ポジ両面について尋ねることで、キャリアの見通しや、自己認識のあり方について知るための質問です。具体的な内容を聞き出すのではなく、求職者の価値観を総体的に捉えるうえで有効だと考えられます。

適性や能力に関する質問

求職者の得手不得手や、特定の業務に対する適性などを確認する際に有効な質問です。

「この仕事は任せてほしい」という業務と、「できるなら避けたい」という業務について教えてください

得意分野と苦手分野を知るための質問です。別個の質問として聞いてもよいですが、話の流れによっては「現実が見えてないと思われるかもしれない」「選り好みしていると思われるのでは」など、率直に答えることをためらう求職者もいるかもしれません。

併せて聞かれれば「特性について知りたい」という意図が明確に伝わり、答える側としても得手不得手を関連づけながら話を展開できると考えられます。ただし、業務の内容についてある程度想定できていることが前提となる質問ですので、全体像が明瞭でない場合には、情報開示の意味でも簡単に業務の構成について前置きしておくとよいでしょう。

仕事をするうえで課題に感じていることは何ですか?

スキル面やコミュニケーション面など、業務遂行において求職者がネックとして自覚しているポイントを知るための質問です。

得意なことや将来のビジョンについては話を組み立てやすいですが、苦手意識のあるものについてスムーズに思考を展開することは難しく、直接「苦手な仕事はありますか」と聞いても率直な答えが返ってこない可能性もあります。「課題」や「改善点」など前向きな言葉を使って尋ねることで、苦手意識についても話しやすくなるでしょう。

知りたいポイントに焦点を合わせ、業務の遂行や、組織における役割など、いくつかの観点から質問するのも有効です。

まとめ

求職者の本音を引き出すために、質問の内容を工夫することはもちろん重要です。しかしその前提として、求職者の「人柄そのものを受容する」空気を形成しておくことが、面接を実りあるものにする条件となるでしょう。

採用面接では、求職者が「本来の自分を出したいが、出し方がわからない」という心理状態に陥っていることも多いです。面接官側から歩み寄る姿勢を見せながら、相手の人柄に対して関心を寄せていることを好意的なリアクションで示していきましょう。

テンプレート的な内容とは異なる角度から質問していく際には、「企業側として何を確認しておきたいか」という点を明確にしておくことが大切です。物事の捉え方や考え方の傾向、判断と行動の様式など、焦点を明確にすることで質問の有効性も高まると考えられます。

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この記事を書いた人
鹿嶋祥馬

大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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