従業員満足度アンケート(ES調査)のメリットとは?質問例や実施手順も紹介

職場環境

「従業員満足度アンケート(ES調査)」は、組織が発展していく上で欠かせない調査です。

経営活動を支える従業員のモチベーションを可視化することで、これまで判明してこなかった潜在的な組織課題をあぶり出せる可能性があります。彼らの不満に気づかないまま問題や課題を放置してしまうと、業績ダウンや離職率の増加に繋がってしまう可能性も否定できません。

そこで今回は、従業員満足度の重要性を押さえた上で、アンケート調査を行うメリットや実施手順、代表的な質問項目・例文などについて解説していきます。最後には、無料で使えるWebアンケート作成ツールも紹介しているので、実施を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

従業員満足度とは?

従業員満足度とは、所属組織に対する従業員の満足度を示す指標です。英語表記の「Employee Satisfaction」を略して「ES」とも呼ばれています。

 厚生労働省の調査では、「従業員満足度と顧客満足度の両方を重視する企業」は、「顧客満足度のみを重視する企業」に比べて業績が向上し、人材確保ができているとの結果が出ており、企業経営においては継続的に雇用管理改善に取り組むことが重要とされています。

(参照:厚生労働省「今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業 報告書」

従業員満足度に影響する要因は、業務内容や給与、職場環境、福利厚生など多岐にわたるため、抱える課題は組織によって異なります。そこでまずは、「従業員満足度アンケート(ES調査)」を実施し、現状の組織課題を明らかにすることが大切です。

従業員満足度アンケートを行う4つのメリット

従業員満足度アンケートを行うメリットとして、以下の4つが挙げられます。

従業員満足度アンケートを行うメリット

①従業員の満足度を可視化できる

②組織課題を発見できる

③業績の向上や離職率の低下が期待できる

④施策の効果を検証できる

詳しく見ていきましょう。

①従業員の満足度を可視化できる

日々の様子や対面のコミュニケーションだけで従業員の満足度を正確に把握することは難しいですが、アンケート調査を行うことで、従業員が働く際に感じている自社への満足度を可視化できます。調査結果を分析することにより、相互理解を深めるきっかけを掴めるでしょう。

②組織課題を発見できる

仮に組織に対してネガティブな感情を抱いていたとしても、人事担当者や上司には面と向かって言えないこともあるでしょう。その点、アンケート調査であれば非対面で回答できるため、従業員にとっては意見を伝えられる絶好の場となります。率直な意見や感想を集めることにより、潜在課題を引き出せる可能性が高まるでしょう。

③業績の向上や離職率の低下が期待できる

アンケート調査によって組織課題を明確にできれば、課題改善に向けた適切な施策を講じることができます。これにより従業員満足度が向上すれば、個々人のモチベーションが上がるため、業務パフォーマンスの向上や離職率の低下が期待できます。1人1人の生産性が高まればチームの成果も上がるため、結果的に組織全体の業績アップにも繋がるでしょう。

④施策の効果を検証できる

施策実施後、一定期間を置いて再びアンケート調査を行うことにより、その施策の効果検証ができます。効果が出ていれば別の課題を洗い出し、効果が出ていなければ施策を練り直す、といったようにPDCAを回しながら継続的に調査を行うことで、自ずと満足度は高まっていくでしょう。

従業員満足度アンケートの実施手順

従業員満足度アンケートを実施する際の基本的な流れは以下のとおりです。

従業員満足度アンケートの実施手順

Step1.調査目的を明確化させる

Step2.アンケートを作成する

Step3.アンケート調査を実施する

Step4.アンケート調査の集計・分析を行う

Step5.施策を検討・実施する

順番に解説していきます。

Step1.調査目的を明確化させる

まずは、アンケート調査を実施する目的を明確にしましょう。

調査目的として、

・従業員のモチベーションを測定したい

・離職の原因を突き止めたい

・組織課題を顕在化させたい

・施策の効果を検証したい

などが想定されますが、どれを重視するかによって質問項目が変わってきます。目的がブレていると質問設計にも影響するため、調査前に必ず目的を明確化させましょう。

Step2.アンケートを作成する

次に、アンケートの全体像を決めていきます。「Step1」で決めた目的の達成を意識しながら、具体的な調査内容を設定しましょう。

主な設定項目は以下のとおりです。

・調査スケジュール

・調査対象者、調査規模

・調査方法

・質問項目、回答形式(選択回答形式、自由回答形式など)

以上の項目が固まったら、実際にアンケートを作成していきます。調査方法は大きく分けて、アンケート用紙に記入してもらう方法とWeb上で実施する方法の2種類がありますが、配布、回収、集計の手間を考えるとオンラインでの作成・実施がおすすめです。

Step3.アンケート調査を実施する

準備が整い次第、アンケート調査を開始しましょう。

従業員満足度アンケートの場合、対象者には業務の時間を割いてアンケートに回答してもらう必要があります。そのため、事前に調査の目的やフィードバック方法を周知し、理解と協力を得られるようにしておきましょう。

Step4.アンケート調査の集計・分析を行う

アンケートの回収が完了したら、集計・分析作業に移ります。

代表的な集計・分析方法は以下の3種類です。

従業員満足度アンケートの主な集計・分析方法

単純集計

全体の傾向を把握するための集計方法です。質問項目ごとの回答者数や回答比率が調べられます。

クロス集計

性別、年代別、役職別、部署別など、従業員の属性に分けて傾向を見る集計方法です。回答結果を深堀りできるため、単純集計では気づけないような潜在課題の発見に繋がることがあります。

相関分析(満足度構造分析)

項目間の相関関係を明らかにする分析方法です。総合満足度の高い従業員の傾向を分析することで、満足度に強く影響する要因を解明しやすくなります。

例えば、「総合満足度が高い従業員は、労働時間への満足度も高い」という傾向が判明した場合、労働時間と満足度に深い関係性があることが推測できます。仮に、総合満足度の高い従業員の平均労働時間が8~9時間、総合満足度の低い従業員の平均労働時間が10~11時間だった場合、後者の労働時間を短縮するための施策を講じることで、満足度を改善できるかもしれません。

調査目的や分析対象によって最適な集計・分析方法は異なるので、臨機応変に使い分けましょう。

Step5.施策を検討・実施する

最後に、「Step4」の分析によって明らかになった課題の解決に向けて、具体的な改善施策を検討します。複数の課題が浮き彫りになった場合は、優先順位を決めながら順番に施策を実行しましょう。

また、このタイミングで従業員に向けてフィードバックを行うことも忘れてはいけません。結果が良くないときは調査結果の公表を躊躇してしまうかもしれませんが、従業員の立場に立てば、自分の協力したアンケートの結果が気になるでしょう。ここで調査結果をうやむやにしてしまうと不信感を抱かれてしまう危険性もあります。その後のアンケートの回収率にも響いてくるため、どのような結果であってもオープンに共有するようにしましょう。

従業員満足度アンケート作成時の注意点4つ

実際に従業員満足度アンケートを作成する際、いくつか注意したいポイントがあります。今回は、回答精度の向上に効果的な以下4つの注意点をご紹介します。

従業員満足度アンケート作成時の注意点

①質問項目を増やしすぎない

②堅苦しい表現は避ける

③匿名式か記名式か明記する

④自由回答欄を設ける

1つずつ見ていきましょう。

①質問項目を増やしすぎない

質問項目が多すぎると、回答者に大きな負担をかけてしまいます。また、ボリュームの大きいアンケートは回答者の集中力や回答意欲の低下を引き起こすため、精度が悪くなってしまう可能性も高いです。

とはいえ、減らしすぎてしまうと分析材料が足りなくなってしまうため要注意。重複しない程度に質問を厳選し、シンプルで回答しやすい構成を心がけましょう。

また、依頼の段階で質問数や所要時間を伝えておくことも大切です。先ほどもお伝えしたように、従業員満足度アンケートは業務時間内での回答が想定されるため、スケジュールを立てる上で所要時間は重要な情報になります。「数分で回答できるものなのか」、「しっかりと時間を設けなければならないのか」が分からないと回答を躊躇してしまうため、回答率を上げるためにも事前に伝えておきましょう。

②堅苦しい表現は避ける

回答精度の高いアンケート調査にするためには、文章にも工夫が必要です。質問文に堅苦しい表現が多いと理解するのに時間がかかってしまい、スムーズに回答を進められません。回答の負荷も大きくなるため、分かりやすく簡潔な文章を意識しましょう。

③匿名式か記名式か明記する

従業員満足度アンケートは、記名の有無がアンケート内容を大きく左右します。どちらが優れているかは調査目的によって異なるため一概には言えませんが、参考までに匿名式と記名式のメリット、デメリットを確認しておきましょう。

記名調査のメリット&デメリット

メリット

・回答者が特定できるため、後々フォローしやすい

・未回答者をリアルタイムで把握できる

・丁寧に回答してもらえる可能性が高い

デメリット

・個人が特定されるため、本音を引き出しにくい

・アンケート回収率が下がりやすい

匿名調査のメリット&デメリット

メリット

・匿名性が担保されているので、本音を引き出しやすい

・アンケート回収率が上がりやすい

デメリット

・回答者を特定できない

・未回答者が把握できない

・回答が雑になりやすい

どちらもメリットとデメリットを併せ持っているため、目的や状況に応じて設定するようにしましょう。

また、記名式であっても「機密扱い」にすることで得られる回答が変わってきます。匿名調査に比べるとリアルな意見は聞きづらいかもしれませんが、担当者にしか知られないという安心感が回答のハードルを下げる可能性も高いため、こちらも検討してみてください。

④自由回答欄を設ける

回答形式は大きく分けて「選択回答方式」と「自由回答方式」の2種類があります。

正確なデータを取得するためには、想定できる回答をすべて用意しておく必要がありますが、「選択回答方式」の場合は、担当者の想定範囲内でしか解答項目を用意できない可能性があるため注意が必要です。なるべく「その他」や「該当なし」といった項目とともに自由回答欄を設け、該当する回答がなかった場合の逃げ道を作っておきましょう。

従業員満足度アンケートの質問項目&例文

ここからは、従業員満足度アンケートの代表的な質問項目を例とともにご紹介します。

従業員満足度アンケートの代表的な質問項目

①基本情報

②仕事

③職場環境

④上司

⑤人事制度

⑥経営

⑦総合評価

1つのアンケートで全ての項目を含めてしまうとボリュームが大きくなってしまうため、調査目的に合わせて質問項目を絞りながら設計しましょう。

①基本情報

まずは、従業員の属性を把握するための項目を設置しましょう。主な質問項目として、名前(記名式の場合)、性別、年齢(年代)、所属部署、役職、勤続年数などがあります。

質問例

Q.あなたの年齢を教えてください

Q.あなたの所属部署を教えてください

Q.あなたの役職を教えてください

②仕事

仕事全体の満足度に関する項目です。業務内容、業務量、労働時間、業務適性、やりがい、裁量権、成長実感などが挙げられます。5段階評価の選択回答形式にしておくと答えやすいでしょう。

質問例

Q.今の仕事にやりがいを感じている

Q.今の仕事は、自分の適性に合っている

Q.今の仕事は、スキルアップに繋がっている

③職場環境

職場の人間関係や部署内の協力体制、部署間の連携、組織風土など、職場環境に対する満足度を問う項目です。特に、人間関係は満足度を左右する大きな要因となるため、注視しておきましょう。

質問例

Q.職場の人間関係は良好である

Q.部署間でスムーズに連携が取れている

Q.自分の意見やアイディアを発言しやすい環境である

④上司

上司との関係性や信頼感、判断力、マネジメント能力など、上司への満足度を調査する項目です。上司との関係悪化や不満が離職の引き金になるケースも多いため、ここに満足度低下の原因がある場合は早めに対策を講じましょう。

質問例

Q.上司との信頼関係が築けている

Q.上司は、適切なフィードバックや指導をしてくれる

Q.上司の自分に対する評価は正当だと思う

⑤人事制度

組織の人事評価制度に関する満足度を調べる項目です。評価や給与、教育・研修制度、福利厚生、異動、キャリア開発などが該当します。従業員のモチベーションに大きく作用する項目と言えるでしょう。

質問例

Q.会社の評価制度に納得している

Q.会社の福利厚生制度に満足している

Q.教育・研修制度が充実している

⑥経営

組織の経営理念や経営方針、業績、将来性などに関する項目です。方針や将来性に対する共感度や満足度が高い場合は、従業員も意欲的に業務に臨んでくれるでしょう。逆に、不満や不安が大きい場合は離職者の増加に繋がる可能性が高いため、注意が必要です。

質問例

Q.会社の経営理念・ビジョン・経営方針に共感できる

Q.会社の提供するサービスに誇りを持っている

Q.会社の将来性に期待感が持てる

⑦総合評価

総合的な満足度を確認する項目です。組織全体の満足度を把握できる重要な質問項目となります。また、このタイミングで今後の継続意向を調査するケースも多いです。

質問例

Q.今後も今の職場で働き続けたいと思う

Q.総合満足度を5段階で評価してください

なお、今回ご紹介した質問項目や質問例は、あくまでも一例です。アレンジを加えながら、自社に最適なアンケートを作成してみてください。

無料で使えるアンケート作成ツール2選

最後に、従業員満足度アンケートの作成に活用できるWebツールを2つご紹介します。

・Google フォーム

・formrun

どちらも無料で使えるので、初めてアンケート調査を行う場合はお試し感覚で導入してみてはいかがでしょうか。

Google フォーム

「Google フォーム」は、Googleが提供するWebフォーム作成ツールです。Googleのアカウントを持っている人であれば、誰でも無料で利用できます。

簡単な操作でクオリティの高いアンケートを作成できるため、初心者でも安心。また、回答結果が自動集計されるため、面倒な集計作業が必要ありません。さらに、Googleが提供している表計算ツール「Google スプレッドシート」との連携もできるため、分析作業もスムーズに進められるでしょう。


公式サイト:Google フォーム

formrun

「formrun」は、株式会社ベーシックが提供するWebアンケート作成ツールです。テンプレートが40種類以上(2021年7月時点)用意されているため、素早く簡単にアンケートを作成できます。

また、ダッシュボード機能も搭載されているため集計の手間も不要。「Google フォーム」と同様に「Google スプレッドシート」へのエクスポートも可能です。

有料プランもあるので、長期にわたり従業員満足度アンケート調査を実施する場合は、グレードアップも視野に入れて利用してみてはいかがでしょうか。


公式サイト:formrun

まとめ

今回は、従業員満足度アンケート(ES調査)について解説してきました。

従業員満足度アンケートは、働きやすい職場づくりに欠かせない取り組みです。継続的にアンケート調査を行い、積極的に課題改善施策を進めていくことで、従業員1人1人の業務パフォーマンス向上が期待できます。また、個々人が最大限の力を発揮することでチーム全体の成果も上がり、ひいては会社の発展にも繋がるでしょう。

組織と従業員双方が成長し合える関係になるためにも、従業員満足度アンケートを活用して組織課題の解決を目指していきましょう。

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