近年よく耳にする「ダイバーシティ」という言葉。直訳すると「多様性」。元々はアメリカで始まったダイバーシティ経営ですが、性別、人種、国籍、宗教、年齢、学歴など多様さを活かし、企業の競争力を高める取り組みのことを指します。
日本では、ワークスタイルや障害者雇用、性別などで使われることが多く、取り組む企業が増加しています。
ダイバーシティの取り組み事例|成功した企業の取り組み
今、日本の多くの企業は多様な顧客ニーズの対応や労働力人口の減少による労働力を不足といった課題を抱えています。この課題の解決策のひとつがダイバーシティです。ここでは成功事例を紹介します。
経済産業省では、さまざまな規模や業種の企業における取り組みを「ダイバーシティ経営企業100選」として紹介する、事業を実施しています。
一例として住友林業株式会社では、近い将来に専門性の高い社員が不足する懸念を踏まえ、シニア社員が定年後も専門性を活かして働き続けられる仕組み作りと、専門性を継承された若い社員が働き続けられる環境を整備しました。
具体的にはシニア向けには、定年再雇用マッチングシステム。多様な人材が長く働ける環境の整備としては、フレックスタイムや在宅勤務の導入、更には生産性の高い社員には賞与を割増支給といった制度の導入です。
ダイバーシティは大手だけの取り組みではありません。中小企業の増木工業株式会社では、社員の定着に関する課題解決と一人当たりの付加価値増大の為、メンタ―制度の導入、社内制度の充実・周知・働きやすい環境整備に向け改善点を社員間で話し合う委員会を設置し成果をあげています。
ダイバーシティの取り組み事例|失敗した例から学ぶ
では、ダイバーシティが失敗しがちな例としてはどのようなものがあるでしょうか。
よくある例としては、最近の流行りだからと自社の課題、目的を明らかにしないままに目先の打ち手を講じる企業があります。
ダイバーシティというと安易に「女性の活躍支援」と考える企業多いのではないでしょうか。女性採用数の増加、育児制度の整備、託児所の設置等、目的もなく目に見えやすい施策だけを行ってしまった企業はどうなるでしょうか。
タスクは完了したものの次にどう進めてよいか分からなくなる、マイノリティ以外の反感をかう、制度を利用するだけといういわゆる「ぶら下がり社員」を増やしてしまうという結果に終わってしまった例もあるようです。
具体的には、マイノリティである女性のメンバーのみに限定して取り組みの焦点をあて、制度の整備を行っただけで、日々の仕事を進めていく上での女性社員を取り巻く同僚や上司の職場環境や仕事の進め方については、何も手を打てていなかったというパターンです。
その結果、周囲の理解を得られないということが起こっています。会社がよかれと思ってした施策で、かえって、マイノリティの士気が下がり離職につながってしまうこともあります。
ダイバーシティを実現した企業に共通していること
では、ダイバーシティを実現するためにはどうすればいいのでしょうか。成功させた企業に共通する点を紹介します。
まず、成功している企業は最初に経営課題や業務を見つめなおしています。なぜダイバーシティが必要なのか、何のために行うのかを明らかにしているのです。他社で取り組んだ施策をやみくもに自社で真似をしても意味がありません。なぜなら、他社と自社では課題にしていることが違うからです。
次に明らかになった課題に応じた施策を打ち出します。その際、ターゲットを明らかにします。ただ単に女性支援を行うのではなく、自社の課題によってターゲットを考えます。そして、重要なのはただ単に制度を導入するのではなく、啓蒙や教育を同時に行うということです。
ダイバーシティを進めるときにおこる反発は、管理職や古参社員から発生しがちをいう側面があります。マイノリティを孤立させないためにも、役員や管理職層を中心に啓蒙や教育が必要です。
更に、施策を打ち出して終わりではなく、状況によって改善を加えていく、振りかえりを行うという必要があります。成功している企業は取り組みの結果、離職率の結果や1人あたりの生産性の向上がどうなったかを検証しています。
まとめ
ここまで、ダイバーシティとは何か、成功・失敗事例、成功させて企業に共通することについてご紹介しました。
一口にダイバーシティ実現への取り組みといっても、企業によってベストな方策は異なります。ぜひ、自社に応じたダイバーシティの取り組みを行って下さい。