人事評価制度とは?メリット・デメリットから基準の作り方まで丸わかり!

組織

企業の規模が大きくなるほど、従業員全員の働きぶりを公平に見続けるのは難しいもの。そこで多くの企業で導入されているのが「人事評価制度」です。

従業員のモチベーションがアップする、人材育成ができるといったメリットがある一方、うまく運用できなければ企業にデメリットをもたらす要素にもなります。

この記事では、人事評価制度のメリット・デメリット、基準を作成する際のポイントや運用の注意点についてまとめました。

人事評価制度とは

人事評価制度

「人事評価制度」は、企業がもうけた基準で従業員を評価し処遇に反映させる制度です。この基準は業績だけでなく会社への貢献度など多角的な観点から設定されます。

人事評価制度を導入している企業は、この制度を用いて半年や1年に1回のペースで従業員の評価を行うのが一般的です。もうける基準によって企業の考えや方向性を従業員に示す効果もあるため、企業ごとに独自の内容が設定されます。

また、働きぶりを評価する基準を設けることは働く社員にとっても好ましいものです。

勤め人にとって自分の働きに対する正当な評価は待遇改善につながる重要事項です。仕事の進め方や成果などが正しく査定されなければ思うような報酬を得られず、労働効率の低下や転職などの動きが出てきます。

責任者の主観混じりの査定ではどのような結果が出ても納得のいくものにはなりません。客観的な基準に従ってチェックされるなら日頃の努力を認めてもらえないという不満は解消され、すべての従業員がやる気を持って仕事にあたる環境が実現します。

つまり、人事評価制度は企業にとっては人的資源の最適配分が実現する、社員にとっては働きに対する正当な見返りが期待できる仕組みなのです。

人事評価制度のメリット

人事評価制度のメリット

人事評価制度を導入することで、評価の数値化により公平な視点での評価が可能になることはもちろん、人材育成や配置の検討に活かせるデータを手に入れることができます。また評価に対する従業員の納得感も生まれ、それによるモチベーションアップが結果的に企業のメリットにもつながります。以下でくわしく解説します。

評価を数値化できる

人材は利益に直結する最重要資源でありながら、その情報をデータ化するのが非常に困難です。担当者の主観が入れば正確な結果は得られませんし、相性や魅力など組織運営上は重要な一方、査定が難しい項目も多くあります。うかつに手を出すと不正確な結果が出てしまい、かえって経営効率が悪化してしまう可能性もあります。

企業の経営において、資源をデータ化した上で最適な活用法を模索することは非常に大切です。人事評価制度では、明確で客観的な基準に従って従業員の評価を数値化することができます。異なる個性を持つ人材を平等に取り扱えるようになり、配置転換や教育プログラムの導入など、人材ひとりひとりに対する適切なアプローチが可能になります。

従業員と企業の方向性を合わせられる

人事評価制度を導入することで、従業員は昇給や昇格に直結する評価基準を意識しながら業務に取り組むでしょう。企業の考えや方向性に沿った評価基準を設定し、従業員がその評価基準を意識しながら業務に取り組むことで、企業が大切にしている考え方をスムーズに浸透させることができます。

コミュニケーションを促進できる

上司から部下に対して評価やフィードバックを行うことは、コミュニケーションの活性化にもつながります。上司からの褒め言葉は部下のモチベーションアップになりますし、鋭い指摘も日頃から部下のことをしっかりと見ていなければできないため、信頼関係の構築につながります。

評価に対する納得感を与えられる

評価基準が設けられていない企業の場合、従業員は自身の給与や役職がどのような基準によって決められているのかを知る術がありません。昇給の場合は良くても、しっかりとした評価基準が定められていないのに減給を受けたとあっては、納得できない従業員の方が多いでしょう。

人事評価制度を導入することで、従業員に評価の理由を知ってもらうことができ、納得感を感じてもらいやすくなります。

従業員のモチベーションアップが期待できる

評価基準があいまいな場合、従業員は業務に対して漠然と努力することしかできません。人事評価制度の導入によって評価基準が明示されていれば、どのようなことを意識して働けば評価につながるのかわかりやすいため、従業員のモチベーションアップが期待できます。従業員のモチベーションアップは会社の業績向上にもつながるでしょう。

人事評価制度のデメリット

人事評価制度のデメリット

人事評価制度の導入は、企業の業績や運用の仕方、従業員の受け取り方によってはデメリットをもたらす危険性もあります。メリットとあわせて確認しておきましょう。

評価に対する処遇で不満が生まれる

はじめから企業にとって無理な昇給や昇格はもちろん、決算において増収増益を達成できなかった場合や赤字決算に転落した場合も、昇給や昇格をさせることは困難です。

評価に対する処遇が従業員の期待を下回ってしまった場合、人事評価制度を導入したことがかえって、従業員の不満を招くことにつながる可能性があります。また、業績が悪化したことにより適当な昇給や昇格といった処遇が行えなかった場合も、これまで以上のモチベーション低下を招いてしまうかもしれません。

従業員から不満が出てしまった場合、納得のいく情報の開示や説明を行う必要があるでしょう。

評価に直結しない業務へのモチベーションが下がる

人事評価制度を導入し評価基準が明確になった結果、評価に直結する業務へのモチベーションが上がる一方で、評価に直結しない業務に対するモチベーションが下がってしまう可能性があります。評価基準が働き方の軸になることも大いにありえるため、企業の方向性を明確にしたうえで基準の作成は慎重に行いましょう。

人事評価の基準の作り方

人事評価制度では基準作りが重要なポイントになります。どんな基準を採用するかによって得られる結果は全く異なるものになり、その後の人材活用に大きく影響します。

人事評価の基準の作り方として重要なのが「社員に何を求めるか」を明確にすることです。求めるものを正当に査定できる判定基準を設けることが、社員を有効に活用するための第一歩です。

優秀な人材、という漠然としたイメージだけでは社員が持つ本当の能力をすくい上げることはできません。

例えば、接客を行う仕事であればコミュニケーション能力やセールストーク力が重要視されるのに対し、工場で作業を行う仕事では集中力や黙々と仕事に取り組める能力の方が大切です。調理師にはプログラミングの技術は求められませんし、マニュアルにのっとって作業を行う仕事ではユニークな発想力がむしろ妨げになってしまうかもしれません。

欲する能力や人材像を明確にすることは、企業経営において必要なものとは何なのか、どのように利益を最大化するべきなのかを追求する行為でもあります。会社として目指す方向を考えることが、有用な人事評価基準の作成に繋がるのです。

人事評価制度を運用する際の注意点

人材活用に大きな効果が期待できる人事評価制度ですが、実際に運用する際には注意すべき点があります。

まず評価基準においては、業務内容や組織体制にマッチしているかどうかを意識して設計することが大切です。

偏った目線で設計してしまっては、現場との間に溝ができてしまう可能性があります。部署や現場に最適化された基準を個別に設計するのが理想ですが、一律の基準を採用する場合でもそれぞれの事情に合わせてカスタマイズできる柔軟さが必要です。

評価をくだす判断材料となる個人データの取り扱いにも注意が必要です。

評価の使い方を誤れば社員のキャリアを歪める事態になりかねません。制度を活用して得られたデータは重大な個人情報であり、万一漏洩するようなことがあれば大問題です。結果は厳重に管理し、情報へのアクセス権にも制限を設けるなど十分なセキュリティ体制の確立が必要です。

また、評価は客観的な視点で行わなければいけません。

主観や先入観が混じれば査定結果は歪んだものになってしまいます。データが歪められれば従業員の働きを正当に評価できなくなってしまい、企業にとって人材活用の妨げになります。評価は必ず複数人でチェックを行い、不正や偏りなどを感じた場合はすぐに再検討し、収集したデータの信頼性を確保することに努めましょう。

正しい評価制度は企業の活性化につながる

人事評価制度は、企業にとっても従業員にとってもメリットとなる点が多い制度です。ただしそれは正しく運用できた場合のこと。設計や運用が雑であれば、一転して不満を生み出す要素に変わってしまいます。

正しい評価制度は、従業員のモチベーションをアップさせ、従業員と企業の信頼関係を構築する一歩となります。効果的な人材活用のみならず、企業にもたらすプラスの要素は計り知れません。

人事評価制度に対する正しい知識を身につけてうまく運用できれば、企業の活性化に一役買ってくれるかもしれません。

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