出戻り社員の採用~メリットとデメリット、失敗と成功~

出戻り社員採用の成功と失敗 採用

転職や独立、家族の介護、育児などを理由に一旦退職した社員が、元の会社に再雇用されることを俗に「出戻り」といいます。

かつてはタブー視されていたこの出戻りが、いまや多くの企業で受け入れられるようになったのはなぜなのでしょうか。

本記事では、出戻り社員が増えている背景や、メリット・デメリット、よくある失敗理由、成功に必要なポイント、それらを踏まえた彼・彼女らを採用するうえで気を付けなければならないこと……等々幅広く取り上げ、解説します。

出戻り社員とは?採用における変化

かつて所属した会社へと戻るビジネスマン

出戻り社員とは、一度勤めた会社を辞職した後、再びその組織に雇用される社員のことです。
この場合、定年後の再雇用は該当しません。
あくまでも、他の企業への転職や、独立・起業、育児や介護などで(かつてその企業から)雇用契約のもと離れた方が、時間を経てまた(その企業の社員として)戻る場合を指します。

終身雇用ベースだったかつての日本企業では、自ら辞めた人間を再び受け入れることは非常に稀なケースだったはずです。
離職とはすなわち縁を切ることといった価値観が蔓延していた印象さえ覚えます。
そうしたなか昨今は、多くの企業で“出戻り”に対する採用スタンスの変化が顕著です。

一度離れた人間の再入社を認める流れは確実に増えています。
出戻り社員について紐解くことは、採用市場で今何が起きているのかしっかり把握するために、もはや必然だといえるかもしれません。

出戻り社員の採用が増えているのはなぜ?

出戻りたいかつての社員

出戻り社員が増えているのは、新規採用で優秀な人材を確保するのが難しくなっていることが大きな要因になっているといえます。
その背景には、少子高齢化によって労働人口が年々減っていることが挙げられるでしょう。もはや、「出戻り社員の採用などあり得ない」といった凝り固まった考え方を押し通すわけにはいかない現状です。
とはいえ、積極的に出戻り社員を採用しているのは、まだごく一部の企業という印象も拭えません。しかし、出戻り社員も視野に入れた採用活動をしている企業は決して少なくはないのです。あるアンケートの結果では、「これまでに一度辞めた社員を再雇用したことがある」と回答した企業が、全体の7割を超えていました。

出戻り社員は、過去に在籍していたということもあり、ある程度どのような資質を持った人物かがわかります。そのため、未知数な部分が多い新規応募者よりも素性を知り得ている分、戦力の計算は容易です。また、過去に何らかの理由を付けてその企業を去ってから、離れている間に新たな力を身に付けている可能性も十分にあり得ます。仮にその力を活用できれば、企業にとっても大きなプラスになるでしょう。

「出戻り社員は前例がない」という理由だけで門前払いしていると、気付かないまま必要な人材を他社に譲ることになるかもしれませんね。

出戻り社員を採用するメリットとは?

出戻り社員の採用選考

出戻り社員には一から社員教育を施す手間を省くことができます。時とともに内容は変わっていくこともありますが、大抵は一度その企業で学び、培ったもので流用可能です。

そもそも採用活動にかかるコスト自体、いくつかのプロセスを省略できるため抑えられます。加えて、教育にかけるコストまでをも削減できる点は、大きなメリットだといえるはずです。

また、以前と同じ業務に就く場合は、即戦力としても期待できます。同じ職種でも企業ごとに仕事の進め方に特色があったり、職場内に独特なルールがあったりするものですが、出戻り社員の場合は、そのようなしきたりをあらかじめ身に付けているため、スムーズに業務へと入れるでしょう。

他の部署で働く場合でも、社内のルールや雰囲気がわかっている分、短期間で慣れてくれると考えます。

さらには、前章でも述べた通り、他社で得た新たなアングルが武器として生かせれば、組織の活性化にもつながります。

出戻り社員の採用にはデメリットもある

出戻り社員の見極め方

出戻り社員を迎え入れる際には覚悟が必要な点もあります。

一つ目は、既存社員との関係や評価のバランスです。

社内を知っていて、加えて外での経験から、給与を高く設定することがあると思います。

しかし、そうすると辞めずに働き続けてきた人たちにとっては面白くないかもしれません。実際、出戻りを快く思わない既存社員は存在するものです。

彼・彼女らの不平不満を生まないよう、出戻り社員の採用をする際には、既存社員に対する配慮が必須となります。

出戻り社員に退職時と同じ役職を与えることも考えものです。

一度辞めた社員の再雇用が制度化されていない組織であれば、まずはここを整えましょう。

そうでなければ、「一旦辞めても同じ条件でまた戻れる」と簡単に認識する既存社員が出てくるように思います。つまりは、出戻りOKのルール自体が悪影響を与えかねないのです。

さらに、ルールや仕事の進め方などを大きく変えてしまっていた場合は、在籍時の経験で流用できない方も出てくるでしょう。むしろ、以前のやり方を押し通すようなことになれば、かえって教育し直す時間が余分にかかる恐れもあります。

こうしたデメリットの可能性も、念頭に置くようにしてください。

出戻り社員の採用で失敗する原因は?

採用活動に失敗した担当者

採用選考時、出戻り社員に対して、人となりやスキル面を見誤るケースがあります。それは、過去のイメージ像からの先入観に囚われてしまいやすいからです。

当時のスキルや考え方に変化はないかどうか、しっかり吟味しなければ、いざ採用してから後悔することもあるのでご注意を!

また、自社を退職された後の他社での経験や習得された技術を過剰に評価してしまうのもよくありません。

なまじっか現職のカルチャーに影響され、染まっている場合、自社に対して以前よりもネガティブな思いや違和感を抱きやすくなるはずです。

さらにはそこでのやり方に固執し、周りとの不協和音が生まれることもあります。

結局、自社批判や周囲との軋轢で、その採用は失敗に終わります。

だからこそ慎重な判断が必要です。

単純に以前一緒に働いていた人だから採用するというのではなく、あくまで選考は他の応募者と公平に見極めなければなりません。そうでなければ、企業側はもちろん、再度仲間に加わりたいとお願いにやってきた過去の同志すら不幸にしてしまいます。

「なぜ、戻ろうとしているのか」「どんな力を発揮できるのか」をしっかり確認するなど、 失敗しないためにも、当たり前に必要な試験や質問は行うようにしてください。

出戻り社員採用を成功させるために必要なことは?

出戻り社員の採用に成功

やはり、出戻り社員の採用基準を明確にすることが大事です。成功につながる第一歩といってもいいでしょう。

一口に出戻りといっても、退職理由は人によってさまざま。

ただただ仕事が嫌になって辞めた人もいれば、キャリアアップを目指して転職した人もいます。女性の場合は、出産や育児、家族の介護に加え、配偶者の転勤という理由で辞めざるを得ないこともあります。

まずは前回どのような理由で辞めているかという点を十分に考慮してください。現社員誰もが納得できるような基準での再雇用なら、採用される側にとっても、一緒に働く仲間たちにとってもぎくしゃくすることはありません。

また、会社は辞めてもすぐに戻れるといった悪い意味での認識を、社員へと持たせないようにする取り組みも必要です。

たとえば、勤続年数、退職理由に一定の条件を与えることで、安易な逃げによる離職者の増加をおさえられるでしょう。

退職の際にきちんと仕事を後任へ引き継いだ人だけを対象にするというのも、一つ条件に加えていいかもしれませんね。

出戻り社員の採用を成功させるためには、退職にも再雇用にもある程度ハードルを設けておくべきだと考えます。

出戻り社員の採用はこれからも増え続ける?

増える出戻り社員

出戻り社員を採用する傾向は、おそらく今後も続いていくでしょう。少子高齢化が今後も続く以上、労働人口が減っていくという点は変わらないからです。

ただし、世相に流され軽いノリで採用することだけは控えましょう。

中途半端な形で出戻り社員を迎え入れると、メリット以上にデメリットが生じる可能性が高いからです。

出戻り社員の採用を当たり前のように軌道へと乗せるには、試行錯誤を繰り返す必要があります。

一度の失敗で採用は間違っていたとは判断できません。

もちろん、その逆も然りです。

採用してみて初めて気付くメリット・デメリットだってあるでしょう。

それは会社によって異なるかもしれません。

いずれにせよ、限られた人材を有効利用するために、出戻り社員の採用に力を入れる企業は増えていくはずです。

そのなかで、各会社にマッチした制度、基準を設けることが不可欠だと考えます。

出戻り社員の採用は諸刃の剣

出戻り社員の採用は難しい

出戻り社員の採用にはメリットがある反面、デメリットがある面を無視してはいけません。拙稿にてお伝えしてきた通り、いわば諸刃の剣。

成功させるためには、いかに失敗要素と向き合えるかがポイントです。

一部のメリットだけに注視して出戻り社員を重宝するのでは、さまざまな弊害が生まれます。デメリットを回避するには、明確な採用基準と、既存社員のフォローが重要です。

とどのつまり、応募者が出戻り希望の方であれ、十分な準備があってこそ採用活動に臨めるのです。

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