採用担当者の皆様へ。40代、50代、60代の優秀な人材をみすみす逃していませんか?
いわゆる中高年採用について、近年その評価が見直されています。
組織が活性化するのは、若手のホープ、スーパールーキーの存在に限ったことではありません。むしろ経験豊富でエネルギッシュな中高年世代の躍動が、良い流れを呼び込むことも多いのです。
「人生100年時代」や「多様性」といった言葉が巷で喧伝されるなか、年齢に対する先入観も徐々に薄まりつつあります。
一方で、まだまだ(中高年採用の)メリットに対して懐疑的な向きが多いのも事実です。
「学歴・職務経歴、申し分なし!」
「スキルも十分、即戦力間違いなし!!」
「ただ……」
企業やお店にとって願ったり叶ったりの人材がやってきたとはいえ、仮に職場の平均年齢よりも10歳以上高い方からの応募であった場合、正直、カルチャーフィットへの懸念が生まれてしまう。
そんな採用担当者様は決して少なくないように思います。
もちろん、労働者の募集・採用に当たって、 法として年齢制限を設けることはできないという厚生労働省からのお達しこそありますが、そうはいってもやはり気になる要素でしょう。
筆者の周りでは、とりあえず面接まで実施したところ、より悩む羽目になったという声を耳にしたことさえあります。
当然、職場に馴染んでもらうことは大事です。実際、世代の違いは少なからず影響すると考えます。場合によっては現場だけでなく本人のメンタルにも支障をきたすかもしれません。
使用者、雇用者、同僚、その他組織にまつわるものすべてにとってプラスに作用するには、良好な人間関係を築くことは不可欠ともいえるでしょう。
かつてまことしやかに囁かれた、否、実際存在していたであろう35歳転職限界説の理由や背景にはこうした側面があったはずです。
が、あえて本稿が伝えたいのはその逆の面。
組織が活性化するチャンスをみすみす逃すのは非常に勿体ないという話をします。
読者ターゲットは、「40代以上に対してなんとなく柔軟さに欠けた頑固なイメージを持ち敬遠してしまいがちだ」というそこのあなたです!
ぜひ、考え方や意識を見直すきっかけになってくれれば幸いです。
それではご一読ください。
中高年の求職者が、今後、採用市場で注目される理由
いわゆるミドル、シニア世代は、おそらく今後採用市場でより注目を集めることになるでしょう。
その理由の一つは少子高齢化による労働力の減少が挙げられます。若年層の割合が減ってしまうのは企業にとって当然痛手です。かといって中高年以上の雇用を以前から積極的に進めている組織がそう多いとは思いません。ただし、これからはいよいよ中高年採用も視野に入れなければならない、と従来の方針を曲げる向きが次々と出てくるはずです。乗り遅れてしまっては働き手を失います。現実の問題を回避するには、まさに柔軟な思考が必要です。
そうはいってもやはり気になります。
果たして中高年以上の方は戦力になるのでしょうか。また、企業文化には馴染めるのでしょうか。
詳しくは後述しますが、中高年の求職者に対するイメージに不安は付き物です。しかし、同時に、貴重な経験や卓越した技術を兼ね備えている方も少なくありません。
とりわけ40代であれば、現場力、統率力、そしてどの世代ともうまくいく交渉力に長けた頼りがいのある人たちで溢れています。
50代も、自身のスキルをどこまでも更新していくバイタリティの高い方が、実は多くいらっしゃいます。60代の方は、何といっても若い!それは見た目だけでなく、考え方も含めてです。どうしても意固地な印象が強い方もいるかもしれません。けれども、まずはしっかりその人に向き合うことが大事です。ステレオタイプの見方にとらわれていては、勿体ないことになりかねません。
今、確実に中高年採用の機運は高まってきています。
そして意外なことに、新進気鋭の企業ほどその傾向は強いといいます。
と、ここまで熱弁してもなお、読者のなかで中高年採用に対して冷ややかな視線、あるいは懐疑的な方はいるはずです。
然らば次章より、まずは刻み込まれたその偏見(笑)を少しずつ取り払っていきましょう。
中高年(40代、50代、60代)採用に対する不安要素を分析&払拭しよう
長期勤続によるキャリア形成を理由に若年層へアプローチした求人募集をみかけることがあります。もちろん理由は様々でしょうが、いくつか考えられる例を挙げ、そこに因果や相関、影響はあるのか分析したいと思います。
活躍期間の長さ
確かに若ければ若いほど長期間活躍してくれる期待が可能です。しかし、実際はどうなのでしょうか?
巷でいわれている通り、新入社員が定年まで勤めあげることが当たり前の時代は、疾うの昔に過ぎています。つまり、年齢問わず人材は流動的です。むしろ、ミドル以上の転職者のほうが、キャリアの集大成として最後の職場に貴社を選ぶ可能性は高く、結果的に長く在籍してくれるかもしれません。
部下が年上だと厄介
年上、しかも年配の方が部下になると、パフォーマンスの改善や業務の指示が遠慮がちにならざるを得ないという理屈らしいですが、納得がいく一方で、そうではないケースが往々にしてあるのも事実。
年齢を重ねているがゆえに醸し出される大人の余裕も相まって、違和感や妙な空気を作ることなく、柔軟かつ忠実に部下に徹してくれる40代、50代、60代は多いです。もちろん多少の気遣いを最低限の礼儀として見せることも大事ですが、何より組織で戦っていることを知り得ている方々であり、特に優秀な人材であればなおさら、そこに無駄なプライドを持ち出すことはないでしょう。
ここについては面接で人間性をはかり判断していくことが肝に思います。
昨今、年上部下は決して珍しくないです。
ゆえに特段気にしすぎる必要はないと開き直るぐらいで丁度いいと考えます。
頑固なイメージ
先述した無駄なプライドにもつながる話ですが、大事なのは環境への順応性であり、それは年齢よりも物事を柔軟に対処できるスキルが試されるところです。確かにこれまでのキャリア・実績が邪魔してか、なかなか馴染めない人、自ら進んで新しい知識を吸収しようとしない人など一定数存在します。が、それは邪魔するものこそないがそもそも経験のない若い人でも同様に陥ることです。
年配の方に対して頑固なイメージを先入観として持っているならば、時に優秀な人材と邂逅する機会の損失を招きます。
求職者の環境への適応能力に不安を覚えるなら、面接時の質問や入社後のサポートに対して採用側が主体的になって取り組むことが大切です。
年齢給が高く付く
これはそもそも人事考査を見直すことが必要です。もちろん、給与は能力ヘの対価という概念が浸透している会社ばかりでなく、過去の名残がある組織も少なくないとは思います。そこで年配の方を入れてしまうと、実力にかかわらず給与は年功序列でアップせざるを得ず、歯がゆい気持ちになってしまうこともあるでしょう。
しかし、年齢や年次はスキルや組織の利益に関係ありません。このポリシーに基づいた制度で経営管理・運用しているのならば、おそらく年齢給の有無にこだわるような求職者は応募してこないでしょう。
加えて、能力主義であることをしっかり謳うことで、入社後、精一杯力を発揮しようとする方も多くなるはずです。
仕組みさえきちんと構築できれば、そこへ集まる求職者の年齢はさほど関係ないといえるのではないでしょうか。
採用市場における40代、50代、60代の魅力、メリット
とあるアンケートで「採用にあたって年齢は重要視していますか?」との問いを設け確認したところ、業種によって違いはあったものの「気にしない」の声が少なくなかったことは、興味深いデータの一つだったように思います。
印象的だったのは、40代以上の方々は成果を出すのはもちろん、若手の育成につながる働きを随所でみせてくれるからという理由。
それは手取り足取り指南するだけでなく、背中で語るのも含めてとのことでしたが、なるほどと合点がいったものです。採用活動をする際、自身の審美眼の中で年齢が左右しなくなったきっかけになったともいいます。
思わず膝を打ったのは、一緒に指導されているときさえも若手にとってはその姿が教科書のように映っているというエピソード。
確かに従業員、会社員として過ごした半生の中で、あの時こうしておけばよかったな、という自省を、同じ局面が訪れたときに実行に移しているとすれば、向上心の高い若い方なら近くで何かを感じとることでしょう。
上述した例からも40代以上の新人が同期という目線から影響力を与えてくれるのは、確実にメリットだと考えます。
前章でのネガティブな見方を払拭する考察に加え、本章ではポジティブな価値にフォーカス。
以下、雇用の現場における40代、50代、60代にどのような魅力があるのかあらためて紹介します。
豊富な経験
同業種で長年活躍されてきた方から得られるノウハウは、非常に貴重です。この年代だと大抵はマネジメントも経験されているため、視野が広く、全方位的に良い影響を与えてくれることが期待できます。
築いてきた人脈
優秀な人材は前職、前々職と惜しまれつつ退職される方がほとんどです。それゆえ、同僚という関係から離れても以前の仲間との付き合いは続き、時に力を貸してもらえることもあります。
築き上げてきた人脈の豊かさは、課題やミッションを打開する際に重宝できる誉れ高いスキルといっても過言ではないはずです。
即戦力
経験のある40代、50代、60代には教育コストをあまり掛けずに、即戦力として働いてもらえるメリットがあります。もちろん、仕事の進め方など業務に多少の違いがあれば戸惑いは生じるかもしれません。そこで思い悩み早期退職する方も正直います。が、それは年齢云々というよりは個人の問題。だからこそ経験という武器を諸刃の剣と短絡するのはちょっと待ってほしい。経験によって育ってきたものは思いのほか大きいです。
積年の勘が冴えれば、そう時間を要することなく高いパフォーマンスを出してもらえる期待が持てます。
40代、50代、60代の採用を推奨したい企業の特徴
社内環境、外的要因、世相、時勢等々、人材の流出に考えられる理由はいくつも存在します。仮説のもと一つずつ潰していくのも構いませんが、なかなか改善がみられないとお困りの企業も多いのではないでしょうか。
実はこうした課題が中高年層の採用によって解消されるケースがあります。
とりわけ、以下の特徴に当てはまる企業です。
人事の方はぜひ参考にしてみてください。
若年層の社員ばかりが残ってしまう企業
年齢構成が極端に崩れている組織、特に若年層の社員ばかりが残ってしまう企業は、豊富な経験と知識を持つ中高年社員に頼ることも考えましょう。若手が育つまでには時間がかかります。その間の中継役、あるいは教育係としても、おそらく中高年の皆様は価値を発揮してくれるはずです。
マネジメントにも長けた40代以降の方々の手腕は、未熟なまま停滞している組織を立て直してくれる救世主になり得る存在だと考えます。
新規事業の立ち上げを検討している企業
新規事業の立ち上げを検討する際に懸念されるのは、不確かな勝算要素ではないでしょうか。机上のものでしか計れないとなるとどうしても不安はつきまといます。
ここで欲しいものはノウハウです。そう、経験豊富で勝ちパターンを知り尽くしている方の指南があれば、ある程度の計算の下、事業展開に舵を切ることができます。したがって、そうした人間(欲をいえば多くの人員を指揮できる統率力、加えて、確かな成果につながる経営戦略の達人)を引き入れることができれば、先の展望は非常に明るいでしょう。
予算管理、収支バランスの調整を図る術に長けている方も頼りになるはずです。
そして、上述したあらゆる条件を絞り込んで行き着くのは、お察しの通り(笑)、40代、50代、60代の中高年世代の方々になります。
新規事業の立ち上げを企てている企業はぜひ、彼・彼女らにアプローチしてみてください。
中高年の求職者を採用していくことの意義
年々と少子化が進んでいる現状において、若年層の求人倍率は上がり続けています。ゆえに採用する側の苦労は顕在化し、売り手市場といった言葉さえ浮上しました。こうした時代の変化に対応すべく従来のやり方や方針に固執していては、人材不足が原因で経営を圧迫しかねません。
現在を把握する視野、そして未来を見据える力が無ければ、とかく長期的な人事戦略の観点を持ち合わせる意味がありません。とりわけ中小企業にとっては数十年先の状況を明るく照らすためにもまずは眼前の数年に注力していくことが大事です。
したがって、実務もさることながら人生経験のある中高年の積極採用が、結果的に組織の存続へと導くのではないかと思います。
目まぐるしく変わる情勢に対峙するうえで、短期的な成果の積み重ねが肝心。給与に関しても、年齢給ではなく結果に伴うインセンティブを軸とした報酬制度であれば、多少のプライドがまだ捨てられない(笑)40代、50代、60代でも、ふんぞり返ることなく、必死に業務に取り組んでくれるはずです。
もちろん、迎え入れる側は、あたたかくサポートしてほしいです。
前職で力を発揮できず転職した方の中には、不遇にも周囲の協力に恵まれなかっただけで、実は優秀な逸材であるケースも珍しくありません。
40代、50代、60代。まだまだパワフルに貢献してくれる方は大勢います。
採用活動時、ぜひ前のめりで彼・彼女らに注目してみてください。