採用活動において自社の求める人材を獲得するためには、戦略的な思考が欠かせません。特に、人材獲得競争が激化してる現代においては、自社の魅力を発信できるような施策が必要不可欠です。しかし、具体的にどのような戦略を立てれば良いのか悩んでいる人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、採用強化に役立つ手段として近年注目を集めている「採用マーケテイング」について解説していきます。定義や導入メリットを踏まえた上で、具体的な導入手順を紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。
採用マーケティングとは
採用マーケティングとは、ビジネスにおけるマーケティングの概念や手法を企業の採用活動に応用したものです。一般的なマーケティングで「消費者に自社の製品やサービスを選んでもらうための仕組みづくり」を行うように、採用マーケティングでは「優秀な人材に自社を選んでもらうための仕組みづくり」を行います。
従来のように求職者からのエントリーを待つのではなく、企業側が自発的に自社をアピールすることにより、優秀な候補者が多数眠っている転職潜在層に対しても効果的にアプローチできるようになります。
採用マーケティングが注目を集める背景
採用マーケティングが注目を集める背景として、以下2つの要因が挙げられます。
詳しく見ていきましょう。
人材獲得競争の激化
少子高齢化が進む今、日本の生産年齢人口(国内の生産活動を中心となって支える年齢の人口層)は減少の一途をたどっており、社会全体で人手不足が深刻化しています。これにより、採用市場における人材獲得競争も激化。これまでのように「転職顕在層」のみを対象とした受け身の採用戦略では、自社にマッチする人材を十分に確保することが難しくなってきました。
こうした状況の中で人材獲得競争に打ち勝つためには、積極的に自社の情報を発信する攻めの採用戦略が不可欠であり、これを実現するための方法として採用マーケティングが注目され始めたのです。
参照:総務省「平成29年版 情報通信白書のポイント|第1部 特集 データ主導経済と社会変革」
採用手法の多様化
従来は、Webサイトや紙媒体に自社の求人情報を掲載し、求職者からの応募を待つスタイルが一般的でした。しかし、時代の変化とともに採用手法は多様化。SNSを活用した「ソーシャルリクルーティング」や既存社員による紹介を通じた「リファラル採用」など、さまざまな採用手法が登場し、企業は多様化する選択肢の中から自社に合った手法を選ぶ必要が出てきました。そこで、最適な方法を導き出す手段として、採用マーケティングの重要性が増していったのです。
※「採用手法」について詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事もご覧ください!
>SNSを採用に活用!ソーシャルリクルーティングとは?そのメリットも解説
>中小企業こそ「オウンドメディアリクルーティング」を実践すべき理由
>中小企業の新卒・中途採用は難しいと嘆く前にやってほしい施策14選
採用マーケティングを導入する3つのメリット
採用マーケティングを導入するメリットは、主に3つあります。
まず、採用マーケティングは、あらかじめ設定したターゲット層に対して訴求力の高そうな施策を実行するため、自社の求める人材からの応募が増加する傾向にあります。
また、マッチング精度の高い人材を採用することにより、定着率の向上も期待できます。企業と応募者の認識にズレが生じたまま選考が進んでしまうと、選考辞退や早期退職のリスクが高まってしまうため、ミスマッチを防げるというのは大きなメリットと言えるでしょう。
さらに、採用マーケティングでは、特定のターゲット層に向けたアプローチ方法に絞り込めるため、広告費を抑えられる可能性が高いです。マッチング率の向上により、選考期間の短縮化やミスマッチの軽減が実現すれば、採用業務に関わる人件費や工数、教育コストなども削減できるでしょう。
採用マーケティングの基本的なプロセス
最後に、採用マーケティングの導入手順を紹介します。
1つずつ解説していきます。
Step1.自社分析
まずは「3C分析」や「SWOT分析」などのフレームワークを駆使して「自社分析」を行いましょう。
具体的な採用戦略を練る前に、自社の強みや弱み、他社との差別ポイントなどを認識しておくことで、自社のとるべき方向性が明らかになるでしょう。
Step2.採用ターゲットの明確化
次に、採用ターゲットを明確化します。
例えば、「自社の強みを強化する上で必要なスキルは何か」、「現状の課題を解決するために専門的な経験や知識を持った人材が欲しい」など、先ほどの分析結果を基にアプローチする対象を絞り込んでいきます。ターゲットが曖昧なままだと、その後の進行にブレが生じやすくなるため、具体的かつ明確に決めておきましょう。
Step3.採用ターゲットのニーズ調査
続いて、設定したターゲットのニーズ調査を行いましょう。
アンケートやインタビュー調査、SNSの投稿、過去の採用データなど、採用に関するさまざまなデータを活用して「どのような企業に興味・関心があるのか」、「どんな働き方を求めているのか」といったニーズを明らかにしていきます。仮に、自社の現状とターゲットのニーズが大きくかけ離れている場合は、社内制度や労働環境の見直しを検討したほうが良いかもしれません。
Step4.ファネル別の施策設計
ターゲットのニーズを把握できたら、調査結果に基づいた具体的な施策を検討します。「どのようなアプローチ方法が最も効果的か」ということを念頭に置いて求人内容や採用手法などを決めていきましょう。
今回は、一般的なマーケティングでもよく用いられる「ファネル」という考え方を紹介します。
これを採用マーケティングに当てはめると、次のようになります。
1.認知(目標:自社を知ってもらう)
2.興味・関心(目標:就職・転職先として興味を持ってもらう)
3.応募(目標:就職・転職先の候補にしてもらう)
4.選考(目標:就職・転職先に選んでもらう)
5.内定・入社(目標:入社の意志を固めてもらう)
なお、これはあくまでも一例です。企業によって最適なファネルは異なるため、自社の採用プロセスに応じて設計してみてください。
このようなファネルを設計できたら、各プロセスにおいてどんなアプローチ方法が最適か考えてみましょう。例えば、「認知」フェーズでは「求人媒体・オウンドメディア・SNSのどれが最も広告効果が高いのか」、「選考」フェーズでは「自社を選んでもらうために必要なアプローチは何か」など、それぞれの目標を達成できるような施策を具体的に決めてみてください。
Step5.施策の実施&改善
最後に、施策を実行に移しましょう。
なお、このときに採用データを蓄積・分析することも忘れてはいけません。実際の採用活動で起きたトラブルやミスマッチ、チャネルごとの応募率、内定承諾率、選考辞退率など、採用に関する多種多様なデータを基に戦略を見直していくことで、より効果的な施策へと改善していけるでしょう。
まとめ
今回は、採用マーケティングについて解説してきました。
人材獲得競争の激化や採用手法の多様化が進む現代において、採用マーケティングは優秀な人材を獲得するための手段として非常に効果的です。会社を取り巻く環境や採用ターゲットのニーズをしっかりと把握した上で、戦略的に採用活動を進めることにより、自社で活躍できる人材と出会えるチャンスが広がるでしょう。
長期的な目線で見ても導入メリットの大きい施策と言えるので、採用力を強化したい方はぜひ採用マーケティングの活用を検討してみてはいかがでしょうか。