新しい従業員が入社すると会社はマイナンバー(個人番号)情報を収集します。一方で従業員が退職した場合、会社の一員ではなくなるため、個人情報はすみやかに破棄しなければなりません。企業におけるマイナンバーの保管期間は法令で定められており、人事担当者はこれを把握しておく必要があります。
この記事では、マイナンバーの保管期間や収集方法などについて紹介します。
会社におけるマイナンバー制度について
マイナンバー制度(社会保障・税番号)は2015年10月に個人への通知が始まり、2016年1月より本格運用が始まりました。これにより企業は「マイナンバー法(行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)」に基づいて源泉徴収票や雇用保険、社会保険などの書類にマイナンバーを記載することが必要となり、マイナンバーの収集が義務付けられています。しかし、従業員などは会社へのマイナンバーの提供は義務付けられていません。もし、マイナンバーの収集が拒否され収集できない場合、書類を提出する機関の指示に従う必要があります。
マイナンバーは安全管理が大切
マイナンバーの取り扱いには細心の注意を払わなければなりません。個人番号および特定個人情報の漏えいや紛失を防ぐためにも、管理体制を整えておく必要があります。
まず、マイナンバー管理の担当者と責任者を任命しましょう。そして、担当者と責任者以外にはアクセスできないように権限の設定を行うなど、漏えいのリスクがないような仕組みづくりをします。外部に管理を委託する場合は必要に応じて契約の見直しなどを行い、不測の事態が起きた際の対応などを徹底しておくと良いでしょう。
なお、マイナンバーは退職後には破棄することが定められています。保管期間など取り扱いについてはこの後の項目で説明します。
マイナンバーを収集する必要のある対象範囲
会社がマイナンバーを収集する必要があるのは、従業員の中では正社員や契約社員、アルバイト・パートとその扶養家族です。従業員以外では役員、個人事業主(フリーランス)、株主配当金がある個人株主、社宅の家主(個人の場合)が含まれます。ただし、個人事業主に関しては、支払調書の発生が必要な場合に限ります。なお、派遣社員の場合は基本的に派遣元の会社が手続きを行うので収集の必要はありません。
マイナンバーの収集に必要なもの
マイナンバーを収集する際には本人確認が必要です。なりすましを防ぐためであり、マイナンバーの番号確認と身元確認の両方を行う必要があります。個人番号カード(顔写真付き)の場合は1枚で確認可能です。また、本人に対して利用目的を明確に通知しなければいけません。
会社におけるマイナンバーの利用目的
会社がマイナンバーを利用できるのはマイナンバー法で定められている範囲内に限られています。社会保障、税、災害対策以外の手続きで使用することは禁止されており、これら以外の目的でマイナンバーの収集をすることはできません。なお、マイナンバーの書写しやコピーを取ることはできないので注意してください。届出の際にもマイナンバーの写しは提出しません。
続いて雇用保険、社会保険、労災保険、企業年金など、それぞれに関する書類で必要となるケースを紹介します。
雇用保険
雇用保険関連の書類でマイナンバーの取得が必要となるのは、下記の7つです。
- 雇用保険被保険者取得届
- 雇用保険被保険者資格損失届
- 高年齢雇用継続給付受給資格確認票
- 初回高年齢雇用継続給付支給申請書
- 育児休業給付受給資格確認票
- 初回育児休業給付金支給申請書
- 介護休業給付金支給申請書
社会保障
年金、健康保険または労働保険の取得、喪失などの手続きに必要です。雇用保険に関しては先ほど紹介した範囲になります。なお、扶養家族のマイナンバーも収集する必要があります。
労災保険
会社が労災保険関係の書類の手続きの際にマイナンバーの取集を必要とすることは原則としてありません。マイナンバー情報が必要になるのは障害補償給付支給請求書や遺族補償年金請求書などですが、いずれも個人で手続きを行います。しかし、会社が個人から委託を受けて手続きを行う場合は、それを収集することが可能です。この場合、労働監督基準署へ書類を提出する際に、当事者のマイナンバー番号だけでなく、代理権の確認と代理人の身元確認が必要です。
税
年末調整時に必要となる源泉徴収票(税務署提出用)と給与支払報告書、扶養控除等(異動)申告書に記載するためにマイナンバーを記載する必要があり、本人だけでなく扶養家族の情報も収集します。
企業年金
企業年金関連の書類を提出する場合は、一般的に個人で手続きを行うため会社がマイナンバーを収集することはありません。
収集方法
多くの企業では入社時(雇用開始日)にマイナンバーを収集しています。書類ごとに手続きのタイミングが異なるため、そのたびに収集すると手間になってしまうためでしょう。
マイナンバーを収集する際にお勧めしたいのがマイナンバー収集キットです。対象者が台紙にマイナンバーと本人確認書類を貼り付けて郵送するというもので、従業員すべて同じ様式で収集できるので管理が楽になります。このほかにもクラウドサービスを利用してマイナンバーを一元管理するという方法もあります。
退職者のマイナンバー情報の保管期間について
原則として退職者の特定個人情報が記載された書類はすみやかに廃棄・削除しなければなりません。ただし、保管期間が設けられている書類に関しては経過するまで保管しなければなりません。保管期間は書類ごとに異なり、主な書類の保管期間は下記のとおりです。
- 給与に関する書類:7年間(属する年の翌年1月10日の翌日から)
- 雇用保険に関する書類:4年(退職の日から)
- 労災保険に関する書類:3年(完結の日から)
- 健康保険、厚生年金に関する書類:2年(退職の日から)
なお、破棄する前に特定個人情報に関する書類の作成が必要です。それは給与所得の源泉徴収票と退職所得の源泉徴収票です。また、退職する際に雇用保険の喪失届の提出をしなければなりませんが、この際にもマイナンバーが必要です。
廃棄・削除する場合は完全に
特定個人情報が記載された書類を廃棄・削除する場合、完全に復元できないようにする必要があります。紙で保管している場合、焼却やマイクロレベルで裁断するシュレッダーの使用、マスキングなどをおすすめします。データであればデータ削除ソフトの使用や、場合によっては再現不可能なように物理的な破壊などを考えてもよいでしょう。保管の必要がなくなった書類は絶対に漏えいすることがないように最後の最後まで注意を払うことが大切です。
マイナンバー情報は厳格な管理が絶対条件
会社を立ち上げたばかりで、これからマイナンバーの収集を行うという場合は、はじめに対応方法の確認やリスク管理、社内での環境整備を行うことが大切です。もし、特定個人情報が漏えいした場合、厳しい罰則が課せられます。マイナンバー情報を扱うということは、1人1人の生活に関わる大切なデータを扱うということを常に念頭に置いておく必要があるでしょう。なお管理を委託する場合も、委託先を監督する義務があるため、丸投げすることは絶対にしないでください。
さらに、従業員が退職し会社との関係がなくなった場合でも、特定個人情報は大切に保管する必要があります。保管期間内に廃棄・削除を行ったり、保管期間を過ぎてもそのままにしておいたりするということがないようにしてください。
マイナンバーに関する相談や研修などを行っている機関もあるので、少しでも心配がある場合は活用してもいいかもしれません。